熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

日本での午後のひと時の過ごし方

2016年08月06日 | 生活随想・趣味
   日本で、などと振りかぶって文章を書くのも不思議だが、私には、午後のひと時、特に、中食や喫茶などの時間の過ごし方での思い出で記憶にあるのは、殆ど外国の場合であり、日本では、印象に残っているような経験がかなり少ないような気がしている。
   日本では日常なので、何時もの経験であり、余程変わった特別な経験ではない限り、思い出や印象に残る筈がないと言うことでもあるから当然であろう。

   私の場合、外国では、仕事の関係などで、出張なども含めて、一人で行動することが多かったので、一人でレストランなどに行って、時間を過ごすことがあった。
   しかし、日本では、仕事上や親しい知人や友人、あるいは、家族などとの会食は、結構あったが、一人で食べに行ったり飲みに行ったりなどすることは殆どなかったので、行きつけの店や飲み屋などもなかった。

   外国、私の場合は、ヨーロッパが多いのだが、若かったし、趣味と勉強を兼ねて、ミシュランの星付きのレストランに、一人で出かけて時間を過ごすことも多かったし、午後に、長居をすることもあった。
   別に、苦痛に感じたこともなかったが、このようなレストランには、大概、客は、ビジネス客やカップルなど目的を持ったグループ客たちで、一人客などは、アメリカなどからの出張ビジネスマンだったり、リタイア―した老ジェントルマンといった感じの人だったり、何となく、無粋だし寂しい思いをしたことはある。
   日本では、何故か、特別なレストランに行きたいと思ったこともなかったし、一人で出かけて行く時には、気のおけない場所に行っていたように思う。

   何故、欧米では、ミシュランの星付きとか高級レストランへ気軽に行けたのかと言うことだが、これは、特別なワインを選ばなければ、それが、パリであろうとロンドンであろうと、かなり、リーゾナブルな価格で楽しむことが出来ることである。
   パリの三ツ星レストランでも、私が一人で出かけて、支払える値段であったし、フィラデルフィアのブックバインダーで、留学生の私でも、上等のイセエビ料理を食べることが出来たのである。
   それに、その頃は、Japan as No.1で、私自身、仕事上でも個人的にも、臆することなく、そのような環境で、自由に生活できたと言うこともあるかも知れない。

   ところが、日本では、高級レストランや料亭の飲食代は、けた違いに高くて、一度、赤坂の料亭にイギリス人を連れて行った時に、マツタケの吸い物一椀の値段が、ロンドンのフランス料理のフルコースの値段とほぼ同じだったのを知って面食らっていた。
   別に、コストパーフォーマンスに拘るわけではないのだが、日本の美食は、自分のような並みの人間には、別世界であって、馴染まないと思っている。

   もう一つ、日本には、喫茶店と言う素晴らしい喫茶文化があって、何時でも、好きな時に出かけて、気楽に喫茶や会話を楽しめるのであるが、少なくとも、アメリカやイギリスには、スターバックスが生まれるまで、喫茶店がなくて、コーヒーを飲もうと思えば、ホテルのコーヒーショップやマクドナルドなどに行って飲む以外に、方法がなくて困った。(尤も、ウィーンには、素晴らしい喫茶文化がある。)
   ドラッカーが、スターバックスをイノベーションだと言っているのだが、私は、日本では、喫茶店の応用に過ぎないと思っているが、英米では、確かに、革命的な喫茶文化の開花であり、イノベーションと言えるであろう。

   さて、前置きが長くなったが、特別なことではないけれど、今日、午後、東京と横浜で、すこし、リラックスした時間を、レストランと喫茶店で、過ごしたので、それについて書く。
   一つは、遅い中食を取ろうとして、西麻布の權八と言う居酒屋風のレストランで、過ごしたこと。
   街角に珍しい大きな蔵作りの建物の中が、かなり広いレストランになっていて、蕎麦や天婦羅や丼、所謂、総合的な和食レストランだが、店内は、バーカウンターもあれば、上階には、太鼓などを置いた舞台まである。
   店のこだわりは、”ただ料理や飲み物を提供するだけのビジネスではない。お客様に喜んでいただける空間を創造し、最高のサーヴィスと最高の料理を提供する。つまり「エンターテインメントとしての食事」を創り出すのがわれわれの仕事です。”と言う。
   時間もあったので、生ビールを飲みながら、特選ランチコース3,500円を頂いたのだが、まず、満足であった。
   気に入ったのは、薄暗い店内が、擬古風の田舎家の雰囲気を醸し出した内装で、落ち着いた気分で、食事が出来て会話を楽しめたことである。

   口コミか、英字観光案内に紹介されているのか、外人のグループ客が、半分くらい入っていたことで、室内装飾は、完全に和風だが、室内のムードは、欧米のレストランにある雰囲気と似通った感じが漂っていて、ほっとするところがあって、良いのである。
   食事は、新鮮で、温かい作り立てのものが出てくる。
   昔、京大和で、舞妓さんを頼んで、外人客と会食をした時、絶妙のタイミングで、瓢亭か、近くの料亭から料理が運ばれてきて、三業の鉄壁のコラボレーションが、京文化を支えていることを知って、流石にと思ったことがあるが、この当たり前である筈のサービスが、今の日本では、珍しくなったのである。
   
   
   

   もう一つ、帰りに、横浜の高島屋に寄って買い物の後で、店内のイノダコーヒー店に立ち寄った。
   イノダについては、学生時代から、あの中京区堺町通三条下ル道祐町にある昔の倉庫を改造した本店に行っていたので、良く知っていて、このブログでも何度か取り上げている。
   京都に行けば、必ず行っている喫茶店なので、特に、書く必要もないのだろうが、ロンドンのフォートナム・メイソンの喫茶室とともに、これだけは、私の好きな喫茶店と言えるかもしれない。
   ここも、混んでいたが、少し待って、コロンビアのエメラルドを楽しんで帰った。
   
コメント
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