今回は、「大西洋」「インド洋」「地中海」について、印象に残っている論点について、感想を記す。
まず、「太平洋」の章だが、大航海時代の幕開けから説いており、航海技術の画期的な進歩発展から、トマト、ジャガイモ、トウモロコシ、タバコと言った動植物が入り込んで、ヨーロッパの食生活が変化した「コロンビア交換」「新世界交換」などについても論じているが、やはり、アメリカ合衆国の建国後のヨーロッパ列強との戦いや世界大戦に関する叙述が主体となっている。
アメリカの国際外交について、注目したのは、アメリカは、第一次大戦後、大西洋共同体の構想を基本的に拒絶して、国際連盟にも参加せず、孤立主義と言う誤った考えを取ったことを、痛ましいことだと言っており、
およそ、一世紀後の2016年の大統領選で、トランプが、発言の随所でこの誤った判断を繰り返したと指摘していることである。
彼は、国民に広い世界に背を向けさせ、保護主義の壁を築き、メキシコとの間に実際に壁を築き、NATOを解体し、世界の同盟国と我が国との結びつきを否定しようとしているかに見える。
これは、200年前から国民の心理に脈々と流れるDNAを反映したもので、二度目の世界大戦がはじまる前に見たことがあり、当然ながら、第二次世界大戦と言う恐ろしい結末を迎えたと言って、人類始まって以来の壮絶悲惨であったその後の大西洋交渉史を書いている。
もう一つ、興味深かったのは、ドイツのUボートの脅威について書いて、そのUボートを敗北させたのは、勇気とイノベーションと兵站の結びつきだとして、長距離軍用機、Uボート探索航空機に搭載されたレーダー、水中爆雷とソナーの改良、イギリスの諜報・暗号解読技術(エニグマなど)、護衛艦配備に関する回避戦略、「リ・ライト」などの工学装置などのイノベーションだったと書いていることである。
ドイツの科学者のヴェルナー・フォン・ブラウンのロケット開発もそうだが、第二次世界大戦中に生まれた軍事技術が、その後のイノベーションを誘発して、戦後の経済復興と画期的な経済成長の誘因となったことは否めないであろう。
インターネットもそうだが、多くの軍事的に開発された技術が、アメリカ産業のイノベーション、ひいては、経済成長に大いに貢献していることは事実であろう。
アイゼンハワー大統領が、退任演説で、その癒着と危険を警告した産軍複合体の位置づけも微妙だが、基礎科学の重要性は必須であって、やはり、強力な誘因と経済的余力がなければ、おいそれと生まれては来ないと言うことであろうか。
皮肉と言うべきかどうかは分からないのだが、大恐慌後のニューディールなどの平等化政策や第二次世界大戦を経験したアメリカでは、ほぼ、1970年前半くらいまでが、最も経済的には平等で民主的であったと言うのが興味深い。
「インド洋」の章は、太平洋や大西洋程、話題にはならないが、世界のイスラム教徒の90%が住む地域で、台頭しつつあるインドの動静など興味深い話題も多い。
この章では、2004年にスマトラ島北西沖で発生したマグニチュード9.0の大地震で、国防総省で、危機対策チームを立ち上げて、昼夜を分かたず、救援物資の収集や人道支援や医療支援など、航空機や船舶やマンパワーを大動員して救助にあたった。
6万トンの病院船マーシーとコンフォートの配備などソフトパワーを大量に動員して危機に対処すると言うことが、原子力空母を派遣する以上に安全保障の役割を果たしたのだが、このようなハードパワーとソフトパワーをバランスよく用いる「スーマート・パワー」の重要性を認識したと書いている。
これは、日本の東日本大震災3.11での米軍のトモダチ作戦でも発揮されたので周知の事実である。
ジョセフ・ナイがコインした「スマート・パワー」と一寸ニュアンスが違うが、著者は、その時の感動を記している。
「地中海」は、ここから海戦が始まったと言うサブタイトルだが、文化文明の曙とも言うべき内海の歴史であるから、私には一番興味のあるところである。
スペイン、フランス、イタリア、トルコ・・・何度か旅をして地中海やその沿岸の都市などや歴史遺産などを見ており、一番興味を持って歴史書や芸術書を読んで来たので面白かった。
気になったのは、今、少し下火になっているのだが、イスラム国についての叙述で、「イスラム国が宗教戦争を起こしたいなら、ヨーロッパでローマ以上に格好の標的があるだろうか」と記して、「ヨーロッパの泣き所」を守るためにどうしたら良いか、とその対策を記していることである。
ヨーロッパ列強が仕掛けた十字軍が、いかに凄惨であったか、それに、機関紙には、イスラム国はローマを倒すと言うのが主張の中心で、ジハードを示す黒旗が、サンピエトロ広場に翻る挿絵が添えられていると言う。
意識にはなかったが、テロとしては、あり得る話ではないかと言う気がしないでもないのだが、そうすれば、これは、ハンチントンの「文明の衝突」である。
まず、「太平洋」の章だが、大航海時代の幕開けから説いており、航海技術の画期的な進歩発展から、トマト、ジャガイモ、トウモロコシ、タバコと言った動植物が入り込んで、ヨーロッパの食生活が変化した「コロンビア交換」「新世界交換」などについても論じているが、やはり、アメリカ合衆国の建国後のヨーロッパ列強との戦いや世界大戦に関する叙述が主体となっている。
アメリカの国際外交について、注目したのは、アメリカは、第一次大戦後、大西洋共同体の構想を基本的に拒絶して、国際連盟にも参加せず、孤立主義と言う誤った考えを取ったことを、痛ましいことだと言っており、
およそ、一世紀後の2016年の大統領選で、トランプが、発言の随所でこの誤った判断を繰り返したと指摘していることである。
彼は、国民に広い世界に背を向けさせ、保護主義の壁を築き、メキシコとの間に実際に壁を築き、NATOを解体し、世界の同盟国と我が国との結びつきを否定しようとしているかに見える。
これは、200年前から国民の心理に脈々と流れるDNAを反映したもので、二度目の世界大戦がはじまる前に見たことがあり、当然ながら、第二次世界大戦と言う恐ろしい結末を迎えたと言って、人類始まって以来の壮絶悲惨であったその後の大西洋交渉史を書いている。
もう一つ、興味深かったのは、ドイツのUボートの脅威について書いて、そのUボートを敗北させたのは、勇気とイノベーションと兵站の結びつきだとして、長距離軍用機、Uボート探索航空機に搭載されたレーダー、水中爆雷とソナーの改良、イギリスの諜報・暗号解読技術(エニグマなど)、護衛艦配備に関する回避戦略、「リ・ライト」などの工学装置などのイノベーションだったと書いていることである。
ドイツの科学者のヴェルナー・フォン・ブラウンのロケット開発もそうだが、第二次世界大戦中に生まれた軍事技術が、その後のイノベーションを誘発して、戦後の経済復興と画期的な経済成長の誘因となったことは否めないであろう。
インターネットもそうだが、多くの軍事的に開発された技術が、アメリカ産業のイノベーション、ひいては、経済成長に大いに貢献していることは事実であろう。
アイゼンハワー大統領が、退任演説で、その癒着と危険を警告した産軍複合体の位置づけも微妙だが、基礎科学の重要性は必須であって、やはり、強力な誘因と経済的余力がなければ、おいそれと生まれては来ないと言うことであろうか。
皮肉と言うべきかどうかは分からないのだが、大恐慌後のニューディールなどの平等化政策や第二次世界大戦を経験したアメリカでは、ほぼ、1970年前半くらいまでが、最も経済的には平等で民主的であったと言うのが興味深い。
「インド洋」の章は、太平洋や大西洋程、話題にはならないが、世界のイスラム教徒の90%が住む地域で、台頭しつつあるインドの動静など興味深い話題も多い。
この章では、2004年にスマトラ島北西沖で発生したマグニチュード9.0の大地震で、国防総省で、危機対策チームを立ち上げて、昼夜を分かたず、救援物資の収集や人道支援や医療支援など、航空機や船舶やマンパワーを大動員して救助にあたった。
6万トンの病院船マーシーとコンフォートの配備などソフトパワーを大量に動員して危機に対処すると言うことが、原子力空母を派遣する以上に安全保障の役割を果たしたのだが、このようなハードパワーとソフトパワーをバランスよく用いる「スーマート・パワー」の重要性を認識したと書いている。
これは、日本の東日本大震災3.11での米軍のトモダチ作戦でも発揮されたので周知の事実である。
ジョセフ・ナイがコインした「スマート・パワー」と一寸ニュアンスが違うが、著者は、その時の感動を記している。
「地中海」は、ここから海戦が始まったと言うサブタイトルだが、文化文明の曙とも言うべき内海の歴史であるから、私には一番興味のあるところである。
スペイン、フランス、イタリア、トルコ・・・何度か旅をして地中海やその沿岸の都市などや歴史遺産などを見ており、一番興味を持って歴史書や芸術書を読んで来たので面白かった。
気になったのは、今、少し下火になっているのだが、イスラム国についての叙述で、「イスラム国が宗教戦争を起こしたいなら、ヨーロッパでローマ以上に格好の標的があるだろうか」と記して、「ヨーロッパの泣き所」を守るためにどうしたら良いか、とその対策を記していることである。
ヨーロッパ列強が仕掛けた十字軍が、いかに凄惨であったか、それに、機関紙には、イスラム国はローマを倒すと言うのが主張の中心で、ジハードを示す黒旗が、サンピエトロ広場に翻る挿絵が添えられていると言う。
意識にはなかったが、テロとしては、あり得る話ではないかと言う気がしないでもないのだが、そうすれば、これは、ハンチントンの「文明の衝突」である。