熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

METライブビューイング・・・「コジ・ファン・トゥッテ」

2018年05月11日 | クラシック音楽・オペラ
   今回のMETライブビューイングは、モーツアルトの「コジ・ファン・トゥッテ」。
   「フィガロの結婚」や「ドン・ジョヴァンニ」や「魔笛」と比べれば、かなり上演回数が少ないようで、私も、ウィーン国立歌劇場とロイヤル・オペラで一回ずつくらいである。
   他のモーツアルトのオペラとは違って、オペラ・ブッファの精髄とも言われている喜歌劇で、ストーリー性と言うか実質に乏しい感じのオペラ。

   老練な哲学者アルフォンソが、二人の士官が、貴婦人姉妹と熱愛中なのに、女はすぐに浮気して裏切るとけしかけて、それが本当かどうか賭けをする。
   アルフォンソが指示して、二人の士官を戦場に送り込むと偽って出陣を装い、別人に変装させて二人の前に現れて、恋人役を入れ替わって姉妹にアプローチさせて、クドキにクドキ、自殺を目論むなど執拗にアタックさせて、必死に貞節を守ろうとする姉妹を陥落させる。
   アルフォンソは、小間使いのデスピーナの助けを借りて賭けに勝って、”コジ・ファン・トゥッテ 女はみんなこうしたもの”と言ってほくそ笑むが、最後にタネを明かして大団円。
   本気なのか口から出まかせなのか、歯が浮くような甘い愛のクドキで迫るのだが、上手く口説き落とせば、自分の恋人の心も心配だし、甘酸っぱい思いの熱演に、少しずつその気になって行く女心の帰趨が面白い。

   しかし、今回のオペラは、ナポリを舞台にしたクラシックな舞台ではなく、フェリム・マクダーモットの演出は、傑出していて、
   ニューヨーク市ブルックリン区の南端にある「コニーアイランド」の1950年代の遊園地を舞台に、火吹きや剣飲み、蛇使いなどプロの大道芸人が登場して芸を披露するサーカスのように派手に繰り広げられる現代劇オペラ。
   興味深いのは、これら10人ほどの芸人たちが、アルフォンソの助手として立ち働いて舞台展開をサポートするのみならず、達者な役者としても活躍していて非常に面白い。
   また、舞台は、ナポリの姉妹たちの大豪邸ではなくて、コニーアイランドにあるモーテル:スカイライン、
   以前に観た舞台では、変装した士官たちは、トルコ人かアラブ人の富豪の井出たちで登場していたが、今回は、ニューヨークの街にいるようなジャンパー姿のアンちゃん風の若者姿。
   
   キャストは、次の通り。

指揮:デイヴィッド・ロバートソン
演出:フェリム・マクダーモット
出演:フィオルディリージ(S): ナポリの貴婦人:アマンダ・マジェスキー
   ドラベッラ(Ms): フィオルディリージの妹:セレーナ・マルフィ
   デスピーナ(S): 姉妹に仕える女中::ケリー・オハラ
   フェルランド(T): 士官、ドラベッラの恋人:ベン・ブリス
   グリエルモ(Br): 士官、フィオルディリージの恋人:アダム・プラヘトカ
   ドン・アルフォンソ(Bs): 老哲学者:クリストファー・モルトマン
   
   ここ10年くらいは、ニューヨークにもロンドンにも行っていないので、出演者の舞台には接していないので、分からないが、素晴らしい舞台で、実質3時間、非常に楽しませて貰った。
   コミカルな演技で光っていたデスピーナのブロードウエー・ミュージカルのトップスター・ケリー・オハラは、先年のMETライブビューイングの「メリーウイドウ」で、伊達男カミーユが恋するツェータ男爵の妻ヴァランシエンヌを演じてMETにデビューしており、この時に素晴らしい舞台を観ている。
   第二幕のアリア「女は十五にもなれば・・・」は本格的、とにかく、自由恋愛大いに結構と姉妹を焚き付け煽り立てる。
   この役は、丁度、ファルスタッフのクイックリーに似たキャラクターで、昔ウィーン国立歌劇場でファッスベンダーの凄い舞台を観ており、この舞台でも、医者や公証人としても登場しているので、ズボン歌手が似合うキャラクターではなかろうか。

   今回の舞台では、結構、素晴らしいアリアがあって、楽しませてくれた。
   このオペラでは、舞台が遊園地なので、ゴンドラやメリーゴーランドや白鳥の舟なども登場して、歌手たちは、器用に舞台として演じ歌っているが、
   第二幕で、フィオルディリージが、舞台中空を遊泳する宙乗りの気球に乗って、素晴らしいリリック・ソプラノのアリア「不動の巌のように・・・」「許して恋人よ」をうたって感動的。

   流石にイギリス人でベテランのアルフォンソのモルトンはじめ、主役の6人がぜずっぱりの舞台だが、皆、昔と比べて、歌のうまさは当然としても、容姿にしろ立ち居振る舞いにしろ、芸達者で実に上手い。
   指揮のデイヴィッド・ロバートソンは、作曲家としても活躍するアメリカの才人指揮者だとか、序曲の浮き立つようなサウンドから楽しませてくれた。
   
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