脳を開発するバレーボール指導法

9月20日(土)、東京新聞杯江東予選1日目が行われた。

辰巳ジャンプは実力からして4チーム中3位が順当と思われた。120%の力を出してもやはり3位だと思われた。何しろ4チーム中2チームは都大会に出場して、ベスト16とかベスト32とか、勝利しているチームだから。

しかし今、そんな状況を素直に受け入れるほど私のモチベーションは低くない。

この日の前日に「ルー・タイス氏の来日記念講演会」に参加して、スコトーマ(盲点)を外すことがいかに大事かを記憶に刻んだばかり。さらに、目標設定の重要性について「なるほど!なるほど!」と納得してきたばかり。人間が脳のパワーを100%使ったら、そのエネルギーは原子力発電所1基分に匹敵するほどすごいことも教えていただき、そんなにすごいならば試してみましょうか!といろいろやらせてもらいました。

その結果、相手チームの不調もあったのですが、なんとなんと2位になってしまい、江東区1~4位決定戦という上位リーグに進むことになりました。


さあ、ここからは20日に私がやってみた手法を公開しましょう。
簡単に公開してしまうわけは、今のところ“私にしかできない”手法だから真似できない。ということで公開してもOKでしょう。


まずは当然のごとく「マインドマップをかかせてゲームプランを立てる」ということ。これは宿題でやらせた。「30分くらいで簡単にかいてきていいよ」と伝えてあったので、当日は必要最低限のマインドマップが提出される。

マインドマップを提出させると、子どもたちが何を考えているかがよくわかるということに今さらながら気がついた。子どもたちのモチベーションからその日のねらい、どんな動きをしそうなのかということを、試合前にすべて把握することができた。

試合間に書き足しをさせたのはこれまでと同じだ。特にこの日一番大事な試合だった2試合目の前には入念にかかせた。すると子どもたちはたちまち完全にフロー状態(集中状態)に入り、マインドマップをかくことに熱中してしまった。学校の教室で机間巡視をするかのように、子どもたちのマップを見ていると、声を出すことや強気で試合をすることなどがかかれていた。

例えば、エースアタッカーは文字を書き足したのではなく、「絵」を書き足した(写真参照)。意識することなく「イメージの力」を活用していたわけである。このアイデアは私にも思いつかなかったものだったので、コーチとしてすかさず茂木健一郎先生に教えてもらった「褒めのアスリート」を実行した。

「おっ!絵で描いたんだね!この絵で描いているのが一番いいんだよ!よく思いついたね!きっと試合中にこの絵が頭の中に浮かんで強気の試合をすることになるよ!」

試合は相手チームのアクシデントもあって、こちらの思い通りの内容で進み快勝。マップに絵を描いたエースも頼りになる活躍をしましたし、チームで一番経験が浅いバレーを始めて8ヶ月の6年生もサーブにレシーブに大活躍。マネージャー役でベンチに入ってくださった保護者の方からはこんな感想をいただく。

「子どもたちはどうしちゃったんですか?どうしてこんな短期間に上手になったんですか?2週間見ていなかっただけなのに、まるで別人です。Y.Nちゃんなんかはサーブはいいし、全然できなかったレシーブはほとんどセッターに返しているし。みんなすごいですね。先生、何をやったんですか?」

何もしていません。良いイメージをふくらませるコーチングをしてみただけです。(笑)


試合終了後には「目標設定」という意味について教えました。

まず子どもたちには「設定」という意味が分かりません。これを体育館内にいる大人に聞いてくる活動をしました。教えられるのではなく、自分で調べることを習慣づけたいからです。これで「目標を立てること」を目標設定ということを知る。

次に江東区順位決定戦の目標設定に入りました。子どもたちに考えを聞くと「しっかり走ってレシーブをあげます」「サーブを決めます」「みんなで声を出して頑張ります」という目標イメージしかありませんでした。この目標だと試合の結果につながっていきません。点数を取られても、レシーブをあげてラリーになっていれば目標達成していることになるからです。負けても声を出して頑張っていれば目標達成です。だから良くない目標なのですね。

ではどうしたら良いかというと、「ありえないほど高い目標設定」をすれば良いのです。

「次の試合で最高レベルの目標を考えてごらん。」と問いかけました。子どもたちは一生懸命考えます。
「ミスをしないことです。」
「いや、まだまだ低いよ。」
「試合で勝つことです。」
「それでもかなり低い。」
「あっ!江東区1位になることです。」
「そう!それだよ!でもまだ最高レベルじゃないよ。」
これ以上は子どものイメージでは出てこないと思いましたので、答えを教えました。
「3試合とも勝つこと。しかもセットカウント2-0で勝つ方がレベルが高い。さらに全部のセットを21-0で勝つこと。これが最高レベルですよ。こんなこと考えたことないでしょ!」

保護者の皆さん、この時確かに子どもたちの表情が変わりましたよね!
頭の中で自分自身のセルフイメージが変わった瞬間です。目標が高ければ高いほど、そのギャップを脳が必死に埋めようとしてくれるのです。ゲシュタルトの働きです。どんな結果になるかはやってみないとわかりませんが、持てる力の100%を引き出すための手法を試みてみました。


笑えたのがこのあと。

子どもたちが相手チームの監督さんのところに試合をしてくれたお礼の挨拶をしにいった際、監督さんから、
「次の試合も頑張れば1回くらい勝てるよ。」
と言われたそうなのですが、それに対して子どもたちはポカ~ンとしていた。そこで監督さんが「あ~そうか!」と気づく、
「あ~、そうか!君たちは全部勝つつもりなんだね。すまんすまん。そうだ、そうだ、そういう目標がいいよ。」
すると子どもたち、ニコッと微笑んだそうで。

いやいや目標設定というのは人間のマインドを変えてくれますね!

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で、今日(9月23日)は江東区1~4位決定戦でした。
実力差がありすぎるので、今日はメンタル強化だけではどうにもなりませんでした。でもでも、エースの「りもさん」だけは一皮向けましたね。本当に頼もしくなってきました。孤軍奮闘。よくスパイクを決めて立ち向かいましたよ!

【江東区順位】
1位:ジュニアファイターズ 2位:三大小 3位:三砂ジュニア 4位:辰巳ジャンプ
5位:東雲ドルフィンズ 6位:二砂小VC 7位:数矢小同好会 8位:五大小ロビンズ

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半分教師 第24話 「なんでホームページなのか」

信じられないだろうが、私は基本的にはアナログの人間である。
パソコンのくわしい技術的な話になるとなんだか分からなくなる。

ではなぜ私がホームページにこだわっているのか?
それはアナログ人間だからである。

というわけの分からない文章のはじまりとなった。


私が初めて本格的にパソコンをさわったのが2000年であった。それまで仕事で使っていた自分の「ワープロ」が壊れてしまったことがきっかけであった。しかたないので職場のパソコンをいじってみた。そのころはインターネットがそれほど行きわたっていない時代であった。

パソコンをいじっているうちにホームページという存在を知った。辰巳ジャンプという小学生バレーボールチームを立ち上げたばかりの私は、指導法を学ぶことに非常に貪欲であった。そこで名門チームのホームページを次々と閲覧してみた。

そこで出会った世界が「掲示板(BBS)」であった。

小学生バレー界ではとても有名な監督たちが、掲示板に日記形式でチームの指導を書いていたのだ。ある監督さんは1日に2回も掲示板に書き込みをしていた。そこに書かれている内容は、バレーボール経験のない私には珠玉の宝物であった。まさに砂漠に水をまいたように、私は指導法やチームの作り方について吸収することができた。

こんなに勉強になるのなら、自分もホームページを作ってみたいといつしか思うようになった。パソコンを買ったのはその年(2000年5月)のことだった。そして7月25日。いよいよ「辰巳ジャンプのホームページ」を世の中に登場させることができた。

幸運なことに、その2ヶ月後の9月には読売新聞の取材を受けた。
ホームページの持つ力を実感した出来事であった。

これ以来6年半、ほぼ毎日、何かを書き続けてきた。
よくも飽きずに書いてきたものだ。
このブログの中にある「掲示板過去ログ」は私の貴重な財産となっている。

ホームページの持つパワーをたくさん体験してきた私である。きっとこれからも書き続けていくにちがいない。

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半分教師 第23話 「教育技術は盗むもの」

普通校に移ってできないと痛感したことが三つあった。

「集団を統率する技術」
「授業中に勝手な発言をさせない技術」
「子どもの間のもめ事を解決する技術」

これはすべて教育技術の問題である。その教師の人間性とか性格とかとは別次元の話であると私は思う。

この教える技術を私はベテランの先生から盗んでいった。
1学年が4クラスある大規模校だったことがけっこう幸いした。なぜなら空き時間が週に6時間あったからだ。音楽・図工・家庭科に専科がつき、2時間ずつ合計6時間。この空き時間を利用して、まるで忍者のように先輩の授業をのぞき見して回った。
「お願いして見せてもらえば良かったんじゃないの?」
と言われるかもしれないが、それで見せる授業をされては困ると思い、廊下で人知れず授業を観察した。けっこういろんなことを学び取ることができた。

集団を統率する技術の習得では「メモ魔」になって学んだ。
全校朝会、運動会、遠足など、大人数を動かしていくベテランの先生の一挙手一投足には味のあるものが多い。だてに年数を経ているのではない。その年数を通して通用する技術だけが淘汰されて残っているのである。
「これは使える!」
と思ったものは、すぐにメモをして覚え、実践していった。

子どもの仲介についても、他のクラスでもめ事があり、担任の先生が廊下で話をしている場面を見つけたら、「どうしたんだ?」とばかりに話に入り、ウンウンうなずいて手助けをしている振りをしながら、先生たちの指導パターンを盗み取っていった。

こんな学習方法が正しいかどうかは分からないが、少なくとも自分自身の財産となったことは間違いない。

まあ、職人の親方が「技は盗んで覚えろ」と言葉では教えてくれないのと似ているのかな。わたくし、紳士服の仕立て職人の息子なもので、やっぱり職人気質(かたぎ)なのかもしれませんな。

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半分教師 第22話 「学級通信」

「理解されなくても良い。とにかく文章の雨を降らせていくのだ。乾いた地面に降らせた雨は、まだ見えない地面の下の芽を必ず伸ばしてくれるだろう。」

そんな決意をするきっかけになったのが、小学校に転勤した年の夏休みに参加した研修であった。

第21話に書いたように、私のクラスは「教室騒然」のクラスとなっていた。これを変えるにはどうしたらよいのか?
こういうマイナス状況の時、どんな教育書や技術書を読んでもなかなか役に立つ本に出会えないことが多い。おそらく自分自身の気持ちがまいっているので、良い情報をつかみ取るだけのアンテナを張れずにいるのだろうと思う。

やはり生の声を聞くことが一番だと思う。なぜなら、現場の先生たちはみんな、いつも何らかの悩み・課題をかかえながら仕事をしているから、同僚の苦しみには必ず手を差し伸べてくれるからである。

私の参加した研修の中で、学級通信を最大限活用して学級を立て直していった先生の実践報告があった。その学級通信には毎週の週案、子ども達の声、担任から見た子ども達の良さ、親からの声などが載せられており、クラスのみんなが楽しみに読んでいることがよく伝わってきた。
「これなら自分にもできる!」
と思った。学生時代から文章を書くことは苦ではなかった。

2学期から、週に1回のペースで学級通信「輝け太陽」を発行していくことを始めた。もちろん週案を載せた。これで子ども達は1週間の見通しを持って授業に取り組むようになった。

子ども達の良いところを見つけて記事にする「子どもの心の宝さがし」というコーナーを作った。これによって、私自身の子どもに対する視点が変わった。

私を少しでも理解してもらう必要があると、子どもの頃の自伝も書いた。


学級通信だけがクラスを変えたわけではないが、2学期には見違えるようなクラスに変身したことは事実である。

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