泰緬鉄道、すなわち今日のタイ国鉄ナムトク線の定期旅客列車は、時刻表によると毎日3往復設定され、うち1往復は南本線のノーンプラドゥック・ジャンクションとナムトクの間の線内運転。2往復がバンコクからの直通運転となっていますが、日帰りで終点ナムトクまで往復しようとしますと、休日運転・クルンテープ発の観光快速列車に乗らないのであれば、川向こうのトンブリー(バンコク・ノーイ)7時52分発の一択となります。
そこで、席取りの都合なども考えれば、7時15~30分頃までにトンブリー駅に到着すれば良いことになりますが、個人的には空港鉄道の沿線・ラーチャプラロップ駅界隈に宿を確保しており、トンブリー駅までは結構遠距離。余りギリギリの時間でタクシーを飛ばそうとしても、朝7時前後には結構交通量も多いことから、渋滞にハマってどうしようもなくなる懸念があります(しかも、後で経験するのですが、バンコクのタクシーは渋滞を嫌うあまり、タクシー営業圏の外側に向かう客には「メーターが対応していない」「道を知らねぇ」とウソを並べて乗車拒否をすることがしばしばであるようです)。そこで、まだ交通量が辛うじて少ない朝5時半過ぎにタクシーを拾ってトンブリー駅まで向かおうと画策した次第。BTSスカイトレインが営業を始める午前6時にパヤータイから電車に乗り、サパーン・タークシン (タークシン橋) にて下車したのち、チャオプラヤー川の快速船に乗ってトンブリー駅最寄りのワンラーン桟橋 (最寄りとはいえ1km近く離れています)にて下船するという手もあり、これが最も優雅でおトクな移動ということになります。しかしまぁ、前日の晩にヤンゴンでの激闘を終えてバンコクに着いたばかりですので、それは面倒臭ぇ (笑)。また、トンブリー駅訪問自体が20年ぶりとなりますので、夜明け後なるべく早い時間に到着し、駅移転後の雰囲気を楽しみたいということもあります。
というわけで、ラーチャプラロップ駅前でとりあえずタクシーに向かって挙手したところ、熟練運転手氏が「もちろんメーターでトンブリー駅まで行ってやるよ!」と即承諾! これは実に有り難い……! 途中の官庁街では、例のバリケードに行く手を阻まれて迂回を余儀なくされるという一幕もありましたが(運転手氏は「チッ」と舌打ちしながら、私に向かって「しゃーねーなー!」というノリで苦笑い……。いくらタークシン派がキライなバンコク市民でも、さすがに反タークシン大規模街頭占拠の連続にはウンザリであることが垣間見えました)、実にビシバシ飛ばして6時15分頃にトンブリー駅に到着! 既に気の早い客が7時半以降発のランスアン行とナムトク行に乗るべく集まり、のんびりとしておりますが、席が完全に埋まることは到底あるまいと思い (ほとんどのタイ人客はランスアン行に乗るのだろうと推測)、とりあえず目の前にゴロゴロしている客車や貨車を撮りまくったのでした (笑)。
中でも大いに注目せずにいられなかったのは、裾絞りが無く窓が細かいという点で、明らかに他の車両と比べても古い客車……! スハ32やスハ44のノーシルヘッダー版というべき側面と、戦後型オハ35と満鉄客車を掛け合わせたような妻面の組み合わせが最高に魅力的で、現在のタイ国鉄で依然として現役な1950年代日本製の窓が細かい非冷房2等車と比べても年代モノな雰囲気♪ (そこでウィキペディアでこれらの客車の来歴を調べますと、前にご紹介した紫色旧型特別客車と同じく、1949年・日本製ということが発覚! まぁ、この日はまだそのことが分かっていなかったのですが ^^;) このうち、4連の端に連結されていた車両はロングシート化され、まさにタイ版オハ41と言わんばかりの状態でしたが、駅東側に留置されていた車両は2・3等合造車。
そこで、次のように思案したのでした。「ロングシート車を観光路線であるナムトク線に入れることはあるまい。いや待てよ、サボには小さくNam Tokと書いてある……。とはいえ、どうせこれらは4両に過ぎないので予備車または増結車に違いない。本務編成は別のところに留置されていて、そのうちやってくるのではないか。いっぽう合造車は南本線の快速に組み込むための予備車だろうか。というわけで、これらの車両は本日のお供ではないだろう。しかしいずれにしても、どう見てもタイの現役客車の中では最古参級と思われる超貴重!な車両と思われるので、とにかく激写だ!」……。
とまぁこんな感じで、独断と偏見を脳内に充満させながらハッスルしてしまったわけですが (笑)、その後運命は大きく激動するのでした (何と大袈裟な。つづく)。