小金沢ライブラリー

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マンガ感想-『Q.E.D.証明終了 44』加藤元浩

2017年09月19日 | マンガ感想
「チューバと墓」★☆ 3
~あらすじ~
殺人現場を目撃した探偵同好会の三人組。ところが死体が隠されているはずの現場にはチューバの入った箱と、ガラクタ人形が埋められた墓しか無かった。


~感想~
三人組がいないとほぼ成立しないトリックで、犯人にどういう勝算があったのか理解に苦しむ。警察が無能なだけで逃げ切りかけたような。


「Question!」★★★★★ 10
~あらすじ~
燈馬のもとに届けられたフェルマーの定理が書かれた便箋と、温泉旅館への招待状。
そこには同様に招かれた二組の離婚調停中の夫婦がいた。招待主の正体とその意図は?


~感想~
シリーズ全体でも最高クラスの傑作。初読時にはその年のこのミス裏1位に推したほど。
言われてみれば納得の、しかし予測不能の真相に仰天。
細かい疑問があるにはあるのだが(ネタバレ→)最大の疑問は資金源が不明なこと。まあこれだけの知能を持ちネットを自在に使えるならいくらでも稼げるだろうが。 疑問はあれど全てを補って余りある真相の衝撃がすさまじい。
またラストシーンもこの瞬間のためだけにやってきたのだと感慨深い。
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今週のキン肉マン #218 無葉の紅茶!!

2017年09月18日 | 今週のキン肉マン
・一瞬で凍ったりその氷を一瞬で溶かしたりこの紅茶の科学仕事しろ
・その紅茶は「浸して殴る」よりもっといい使い方があるはず
・コーナーポストを破壊する威力はあの茶葉に依存してたのか
・死のティータイムを破られた時点でもう「ティーバッグで殴る」しか残ってなかったんだな……
・つかまれた手首から凍ればいいのに足元から凍る謎
・流した涙ごと凍らされるのは切ないな
・プラネットマンやアシュラマンが再三にわたり試みてきた「凍らせて殴る」が初成功
・勝ちそうな雰囲気は出してたがやはりトップバッターは厳しかった
・完全な力負けだったが印象に残る勝負だった
・これだけの力の差をどう覆すかが今後の見どころ
・「生きて帰れるなんて思っちゃいねぇ」一番死にそうな人が言うと説得力が違う
・2試合目がカナディアンマンとは意外。早すぎてやはり死にそう
・楓と書いてカナディアンマンと読ませるなww
・3連敗くらいはしそうだからなあ
・死ぬ前にスペシャルマンは間に合うだろうか
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マンガ感想-『Q.E.D.証明終了 43』加藤元浩

2017年09月17日 | マンガ感想
「検証」★★★☆ 7
~あらすじ~
多方面から恨まれていた製薬会社社長が自邸で殺され、娘婿が逮捕された。
その弁護士はアリバイが無いのは本当に娘婿だけなのか検証するため、TV番組に企画を持ち込み、燈馬らに当日の様子を再現させる。


~感想~
推理ゲームに燈馬がどう挑むのか、という展開をあざ笑うように斜め上の視点から真相が降って湧く。
皮肉の利いた解決もまた見どころの良作。


「ジンジャーのセールス」★★★☆ 7
~あらすじ~
MIT時代の恩師の依頼で、銀行の投資先の監査を手伝うことになった燈馬。
民間宇宙旅行会社への融資を求め天才セールスマンとうたわれたジンジャーが現れるが、旅行会社の実情は穴だらけで、ジンジャーは妻を亡くしたトラウマから嘘がつけなくなっていた。


~感想~
お察しの通り主役は燈馬でも可奈でもなくジンジャー。彼がいかにしてセールスを成功させるのかという興味で最後まで引っ張る。
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マンガ感想-『Q.E.D.証明終了 42』加藤元浩

2017年09月16日 | マンガ感想
「エッシャーホテル」★★☆ 5
~あらすじ~
大富豪の御曹司と結婚したエリは、念願だったエッシャーの騙し絵をモチーフにしたホテルをオープン。
しかしその完成披露のさなか、無限階段のオブジェに首吊り死体が現れる。


~感想~
警察がガバガバなだけの端的に言って酷いトリックは置いといて、犯人特定からとどめに至る推理が冴える。
反面、エッシャーの無駄遣いな気もしないではない。


「論理の塔」★★★ 6
~あらすじ~
燈馬のMIT時代の友人ミアは、自分を裏切った恋人や上司への復讐のため、画期的な演算ソフトを廃ビルに隠し、謎を解いた者に渡すと持ちかける。集まった面々はミアからそれぞれ矛盾したヒントを与えられており……。


~感想~
真相は非常にあからさまなものだが、話自体が面白く最後まで興味を引く。ラストシーンがまた非常に良い。
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6/28のNXT #399  壮絶な流血戦(※一人だけ)

2017年09月15日 | 今週のNXT
ホーホー・ルン ×-◯ ベルベティーン・ドリーム
(ダイビングエルボードロップ)

今回の実況は詳細不明だがWWEと揉めているマウロ・ラナーロ。字幕が無いのでぶっちゃけ誰でも良い。
入場にたっぷり時間を掛けた分、試合は短めでジャックハマーで叩きつけた後にエルボードロップを浴びせ、股間をあてがうようないいかげんなフォールでベルベティーンが圧勝した。


ヒデオ・イタミ △-△ オニー・ローキャン
(ドクターストップ)

3週前にヒデオがローキャンに執拗な暴行を加えたためノーコンテストになった試合の再戦。
ヒールターン中のヒデオはガウンもまとわずポーズも決めず、ふてぶてしい態度でリングに上がる。
ローキャンがゴングと同時に走り込んでヨーロピアンアッパーカットを浴びせると、ヒデオは鼻から激しく流血し、止血の甲斐なくドクターストップが掛かってしまった。


ヒデオ・イタミ ◯-× オニー・ローキャン
(go 2 sleep)

ロデリック・ストロングのPVが流された後、両鼻に綿を詰めたヒデオがリングに戻りローキャンを呼び込み、再試合のゴングが鳴った。
一転して歓声に迎えられたヒデオは呼吸が苦しくならないうちに決着をつけようと猛攻撃。ローキャンもそう簡単には主導権を渡さないが、go 2 sleepから逃れた際に右脚をひねってしまう。レフェリーは試合を止めようか迷うが、ローキャンが近づいたヒデオの手を乱暴に払い除けたのを試合続行の意志と見なしたか、負傷に構わずヒデオがgo 2 sleepを浴びせると、3カウントを叩いた。

試合後、ヒデオは3週前のローキャン戦で暴行を働くヒデオを止めに入ったカシアス・オーノを呼び出す。
だが顔を合わせてすぐにSAnitYが脈絡もなく乱入してヒデオとオーノを叩きのめしてしまった。


NXT女子王座ラストウーマン・スタンディング戦
アスカ ◯-× ニッキー・クロス
(実況席直下スーパープレックス)防衛成功

反則裁定無しでとにかく相手を倒し10カウントの間に立ち上がらなければ勝利というルール。女子でやるのは極めて稀である。
アスカはニッキーにゴミ缶をかぶせてキックの連打からミサイルキックを浴びせ、さらに積み重ねたイスの上にデッドリードライブで投擲。
ニッキーもすかさずイスの上にバックドロップを返し、さらにリーガルカッターと必殺技のゴールデンルールの4連発を喰らわせる。通常ルールなら勝負ありだが、アスカはカウント9で立ち上がると、王座ベルトで殴ろうとしたニッキーをハイキックで迎撃。
しかしこのルールではヒールのニッキーに分があり、その後もイスの山へのパワーボムや、場外フェンスを利用してのエゴトリップを炸裂。
さらにアスカをテーブルに寝かせ、ハシゴ上からのダイブでとどめを狙うが、息を吹き返したアスカはハシゴ頂上でニッキーを捉えると、背後の実況席への雪崩式ブレーンバスターを敢行。
ダメージは同等だったがカウント9でなんとか立ち上がったアスカが激戦を制した。
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ミステリ感想-『LOST 失覚探偵 上』周木律

2017年09月13日 | ミステリ感想
~あらすじ~
常人離れした五感を武器に戦前に名を馳せた名探偵・六元十五。
戦後、助手を務めた三田村工は久々に六元に再会するが、彼は人間の限界を超えた集中力を用いる推理法「収斂」により身体を蝕まれ、収斂するごとに感覚を一つずつ失う病に冒されていた。
半ば引退し悠々自適の日々を送っていた六元に、新たな事件の影が迫る。


~感想~
とにかく何かが●る「堂シリーズ」で知られる作者が講談社タイガで別シリーズを展開。
設定といい名前といいやばいくらい藤木稟の朱雀十五とかぶっている主人公だが、いつものようにマジリスペクトしたわけではなく、偶然の模様。たぶん。
なぜ推理をすると規則正しく五感が一つずつ消えていくのかとか、六道に無理くり合わせるために視覚だけ三色に分かれているのは都合良すぎないかとか疑問は多々あるが、並外れた五感を駆使した推理が次第に封じられていく縛りプレイや、視覚や聴覚を失えばそこに当然絡められそうな叙述トリックも期待でき、いかにも面白くなりそうな設定でつかみは十分。

上巻では2つの密室で「火の気のない独房で1週間後に処刑の決まった死刑囚はなぜ焼死したか」と「矍鑠たる男爵はいかにして一瞬で餓死したか」という事件が起こり、いずれもきわめてお手軽なトリックだったものの、事件にも物語全体にも伏線が豊富にまかれ、今後の展開を期待させる。


17.9.12
評価:保留
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SCP-1011~1020

2017年09月12日 | SCP紹介
SCP-1011 -Humanization Process (ソビエト式工業化)
頭部が工具になっている労働者の像。3時間以内に生産活動に従事する人物が視認すると影響を与える。影響は次第に拡大し、集中力の増進と労働への異常な意欲の高まりに始まり、第2段階では道具の使用の拒否。第3段階では道具を一切使わず人数の増加でそれを補うとともに身体が工具のように変形していき、最終段階に至ると変形した仲間の身体を工具として用いだす

SCP-1012 - Secret Chord (秘密の音色)
ある5つの音から構成される和音。数秒の間5つが同時に生成されると、周囲の素粒子を崩壊させる。星のような巨大な物体に作用させれば制御不能の連鎖反応により破壊できると推測され、SCP-1548 - The Hateful Star (きらいきらい星)といった天体規模の危険なSCPへの対抗策として検討されたが、実験自体が世界終焉を引き起こす可能性もあり却下された

SCP-1013 - Cockatrice (コカトリス)
鳥類の頭部を持つ爬虫類。目を合わせた相手を未知の力で麻痺させ、噛み付くことで体表を石灰化させ、穴を開けて中身を食べる

SCP-1014 - Jonah Crusoe (不吉な漂流者)
漂流者に擬態する尾索動物(ホヤ類)。助けを求める声をランダムに発し、救命ボートに卵を産み繁殖する

SCP-1015 - Poor Man's Midas (貧者のミダス)
1セント硬貨。所有者が触れた物体を1セント硬貨に変える。徐々に効力は拡大し、最終的には触れた物体をことごとく硬貨に変えるが、大きな物体の場合は可能な限り効率的に1セント硬貨を敷き詰めた状態に変化させる。元の硬貨(SCP-1015)は捨てても4秒以内に手元に戻り、所有者が死亡するか、関知しない間に盗難されるまで所有権は他人に移らない

SCP-1016 - The Bloody Key (血を流す鍵)
ドアの鍵。類似した形状の2つ以上の鍵とともにチェーンに繋がれると、数週間を掛けて他の鍵とそっくりに変わる。だが常に数十人分の血痕が付着しているため判別は容易。錠の掛けられた、中に1体以上の哺乳類がいる部屋を解錠すると、哺乳類は死亡した状態で発見される。解錠に数秒しか要していないのに、部屋は荒らされ監視カメラ等は壊され、死体は激しく損壊しており、解錠するという行為に部屋全体が巻き込まれていると思われる

SCP-1017 - The Replacement (交代要員)
ロンドンの地下鉄で頻繁に起こる異常現象。運転手が病気等で欠勤の連絡をした際、正体不明の男性が電話を受けることから始まる。運転手が不在にも関わらず電車は無人のまま運転され、何事もなく予定通りに運行する。ただし運転手の不在に気づき運行を妨害すると、暴走し大事故を引き起こす。日曜や大型連休中、あるサッカークラブの試合日等には発生しない

SCP-1018 - The Thirst (渇望)
3体の老人の石像。1体の首の後ろを押すと屋内外を問わず雨が降る。30分にわたり降り続け、水分に触れた他の2体も起動し、2ヶ月以内に行方不明になった子供の霊が水を求め、石像は意味不明のフレーズを繰り返す

SCP-1019 - Anartist's Folly (アナーティストの馬鹿げた行い)
世界中で発生する6つの共通点を持つ異常現象。生命の危機はなく、発生から90日経過するか、財団が公式に記録すると効力は消滅する。
まるでアナーティスト(異常現象を題材にした芸術活動家)の作品のような現象のためこの名前が付けられた。「掲示板の文字が見る人の母国語で読める」「ラジオが延々と同じ曲を繰り返す」「トイレにいる間マニュアル車やチワワの存在を忘れる」等が観測された

SCP-1020 - An Important Letter (重要な手紙)
封筒やボールペン、切手や新聞紙等の文具一式。それぞれ4.5m以上離すことはできず、7~22日に一度、ハサミがひとりでに動いて新聞紙を切り抜き、人質を誘拐したため身代金を要求する脅迫状を作りポストに投函される。受取人が読んだ瞬間に人質に指定された人物は消失し、要求を呑めば無事に帰るが、拒否すれば消失したままとなる。金銭を要求することは稀で、車の破壊や現金のばらまき、刺青を入れさせられる等の理不尽な要求をされる
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ミステリ感想-『機龍警察 自爆条項』月村了衛

2017年09月11日 | ミステリ感想
 


~あらすじ~
IRFのカリスマ指導者キリアン・クインは3人の幹部を引き連れ、かつての同志であるライザ・ガードナー警部を訪ね警告を発する。
港で起きた無差別射殺事件が示唆する大規模テロとの関わりは? 裏切り者と罵られ続けたライザの秘められた過去が今明かされる。

2011年このミス9位、日本SF大賞


~感想~
警察に人型ロボットが配備され日本中でテロが起こる世界観。未知の技術を誇る3機の最新鋭機を擁する特捜部と他部署の対立。その最新鋭機を駆る3人の外人部隊。それを整備する暗い過去を抱えた美少女もとい童顔美女スーパーハカー。特捜部を率いるは一癖も二癖もある飄然とした指揮官……等々、一つ一つを取り出せば臆面も無くベッタベタな要素だらけなのだが、それらが渾然一体となって織り出した作品世界はたまらなく魅力的。
お約束かつ期待通りにとにかくロボットバトルで決着を付ける展開も痛快で、本作はさほどバトルは描かれないし、ライザの過去も実のところベタにベタを重ねたような話なのだが、ベタも究めれば王道となり、王道は常に正しくも面白いものである。

またこれはごく個人的な感想ながら、作中一の美女で元テロリストのライザの暗い過去を描いておきながら、濡れ場はおろかサービスシーンすら皆無という作者の心意気には喝采を送りたい。この設定なら凡百の作家なら安易に初体験だのレ●プだの描きがちなところで、ほのめかす描写すら皆無という潔さはただごとではない。濡れ場が書きたきゃ官能小説を書けばいいだけなのだ。(今後のシリーズや完全版で普通に描いてたらすまん)

第一作「機龍警察」に続き、警察小説、刑事物、ロボットバトル、謀略戦と幅広い読み方を受け入れる、前作からの期待感にそれ以上の形で応えて見せた素晴らしい第二作である。


17.9.5
評価:★★★★ 8
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ミステリ感想-『T型フォード殺人事件』広瀬正

2017年09月10日 | ミステリ感想
~収録作品とあらすじと感想~
「T型フォード殺人事件」
車愛好家の泉は貴重なT型フォードをお披露目する席上で、46年前のフォードにまつわる事件の顛末を語る。面々は推理を競うがそのさなかに思いもよらない事件が起こり……。

1冊の3/4を占める長編で、細かい瑕疵は無視した強烈なトリックが光る。アンフェアとまでは言わないものの、整合性や無茶さには目をつぶり、とにかく驚かせればなんでもいいといった勢いのある一撃で、読者の度肝を抜くことに成功している。
本格ミステリというか新本格ミステリ感あふれる、このトリックだけでも一読の価値があると言えるだろう。
また全くの余談だが外国人男性のロバートがボブではなく「バブ」と呼ばれているのがものすごい違和感であった。昭和47年当時はボブよりもバブが主流だったのだろうか……?


「殺そうとした」
自動車教習所の指導員である黒木は美しい人妻の啓子に惹かれ、彼女の口から冗談半分に夫の殺害計画を聞かされる。
その後、食事に招かれるとおあつらえ向きに夫を殺害する好機が訪れ……。

処女作。短い一編で特にミステリでもないが、短いなりに工夫を凝らした佳作。最後の無双乱舞には笑ったが。


「立体交差」
道路拡張工事を請け負った谷千吉は、立ち退きを拒む発明家の説得に赴く。ところが彼はタイムマシンを発明しており、千吉を未来に行かせ工事の中止を訴える。

純然たるSF小説。SF畑でも鳴らす作者による、昭和47年当時に書かれた未来予想図というだけでも面白くて仕方ない。内容も「世にも奇妙な物語」でとっくに題材にされていてもおかしくない秀逸さで、なんなら表題作よりも楽しく読めた気もする。


知る人ぞ知る表題作はもちろんのこと、三編とも粒ぞろいの長・短編集で、ミステリファンに限らず広範囲の読者がその面白さを味わえるだろう一冊である。


17.8.23
評価:★★★ 6
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ミステリ感想-『NO推理、NO探偵?』柾木政宗

2017年09月09日 | ミステリ感想
~あらすじ~
メフィスト賞史上最大の問題作!!私はユウ。女子高生探偵・アイちゃんの助手兼熱烈な応援団だ。けれど、我らがアイドルは推理とかいうしちめんどくさい小話が大好きで飛び道具、掟破り上等の今の本格ミステリ界ではいまいちパッとしない。決めた! 私がアイちゃんをサポートして超メジャーな名探偵に育てる! そのためには……ねえ。「推理ってべつにいらなくないーー?」

※コピペ


~感想~
「メフィスト賞を狙って獲りに行き、実際に獲った」という点しか評価のしようもない、いわゆる本格ミステリの悪いところばかり目につく典型的なダメミス。
メフィスト賞史上最大の問題作を名乗るなら「コズミック」か「六枚のとんかつ」か「アレ」のどれかを超えなければいけないが、本作と同じ土俵に上がっているのは「黙過の代償」か「極限推理コロシアム」か「パラダイス・クローズド」である。

タイトルになぞらえるなら、3ページ読んだ時点でNO感情になった。喜怒哀楽を失った虚無の感情である。
女子高生2人によるただただ寒いだけの素人漫才が延々と繰り広げられ、その合間に事件らしきものが起こり、最後にちょっとした趣向が明かされる。
最近読んだものから例を挙げれば佐藤友哉「フリッカー式」も酷い文章で、見開き2ページにつき1回ペースでイラッと来たが、本作「NO、NO」には感情を一切揺さぶられることがなかった。酷い文章は怒りを想起させるが、寒い文章は心を凍えさせる。
帯では「絶賛か激怒しかいらない」とうたっているが、そんな陽の感情は喚起されない。許容か虚無の二択である。

何度も言っているが小説で笑いを取るのは至難の業だ。ましてや台詞の掛け合いから笑いを産むのはさらなる困難である。お笑い好きなら「サンドウィッチマンの漫才は文章で読んでも面白い」という評価を聞いたことがあるだろう。逆に言えばサンドウィッチマンレベルで無ければ、文章で書いた漫才は面白くならないのだ。ビートたけしをして「漫才の実力で売れたのはサンドウィッチマンとナイツだけ」と言わしめた、あのサンドウィッチマンのレベルである。
それなのに本作は239ページ、その読みづらさとあいまっておよそ2時間ほどを素人漫才に付き合わされるのである。内輪ネタ満載の素人漫才(それも一組限定)を2時間観せられる番組があったと想像してみるがいい。放送すればもうテレビ界の伝説になることは疑いない。

そんなゴミみたいな文章をある程度まで許容する小説ジャンルは本格ミステリか官能小説くらいだと思う(ラノベは読みづらい時点でアウトである)が、許容されるには強烈なトリックなり、目の覚めるようなロジックなり、わかりやすいエロさなりが必要である。
「四重奏」とか書いてた頃の倉阪鬼一郎も苦行に等しいすさまじい読みづらさだったが、それを補って余りあるトリックと、あれだけのトリックを潜ませるためには、文章の酷さに必然性がいちおうあった。しかし「NO、NO」の場合は、文章の酷さがただただ足を引っ張っている。
トリックの趣向は買えるが、あれをやりたいのならば読む気を失わせる素人漫才は完全に逆効果。まず読者に十分に文章を読み込ませておかなければ、トリックの威力が発揮されないのに、読み進めることそれ自体が苦痛な素人漫才をなぜ選んでしまったのか。特に第四話「エロミスっぽいやつ」は、今までに読んだ全ミステリの中で一、二を争う苦痛を感じたことを付記しておく。

この作者はたぶん普通に面白いミステリを書ける実力を持っていると思うのだが、正直このシリーズは二度と読みたくない。どれだけ素晴らしいトリックを思いつこうが素人漫才のせいで全てが台無し。どんなに美味な料理でも最後にウンコを掛けたら全部ウンコカレーにしかならないのである。
ウンコカレーを二度食べる度胸は、自分には無い。


17.9.9
評価:なし 0
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