ベビーカーとかいう代物を日本で始めて見たのはいつだったか。10年いや20年ぐらい前になるかもしれない。日本の市街地の雑踏の中を押し渡るのを見て強い印象を受けたのをおぼえている。だから具体的におぼえているのだが、チャンっぽい女で舌足らずなら行が口中にこもるような発音で「すみません、すみません」とちっとも済まなそうな顔をしないで雑踏の中を突っ切る。赤ん坊は国籍不明、どこかの国のベビーシッターかなと思った記憶がある。
昨今はいたるところでベビーカーを見るようになった。日本人は真似をするとなると素早いからね。アレと自転車に幼児を乗せる母親、よく事故の不安を感じないものだと感心する。バスにベビーカーを乗せるときも、たたまずに赤ん坊を乗せたままだ。たびたび、危険な情景を見る。アレを抱えてバスのステップに乗せようとすると、たぶん前がよく見えなくて目測を誤るのだろうが、高さが足りなくてベビーカーがバスの床に激突する。また、乱暴な母親が多いから力任せに勢いをつけているものだがら、ぶつかって反動で衝撃が後ろにくる。その反動を支えきれなくてベビーカーを抱えたまま、母親が道路に後ろ向きにひっくり返る。
最近もそういう風景を立て続けに見た。見ているほうがはっとして寒気がする。母親は平気な顔をして起き上がると再度挑戦、今度はうまくいく。赤ん坊は何も分からずきょとんとしている。母は強しだ。しかし安全のためには抱っこがいいね。おんぶだと目が届かないから人ごみではよくないだろう。デパートのエスカレータも危険だ。このほうは慎重にやっているようだが、たとえ載せ方に注意していてもエレベーターには電源停止がある。バックアップの電源に切り替わるようになっているのだろうが、急に止まると慣性の法則でつんのめるかひっくり返るかする。ベビーカーと自分の体重を支えられないと大変なことになる。
そういえば、この間地下鉄で電車にベビーカーを載せ損なって赤ん坊がこぼれそうになったのを見たよ。線路に落ちたらどうなるんだろうね。このごろの若い女は見境も無く乱暴なのが多い。