北海道の東の果ての、根室台地は野鳥の宝庫であった。ほんの30年前までは、春になると騒がしいほどの野鳥の囀る声が聞こえたものである。しかし、その賑やかさはいつとはなしに、懐かしいものになりつつある。その時代の、三分の一程度の減少してしまっている。正確には、その分カラスやスズメやカモメが増えているから、鳥の数ではそれほどの減少ではないかもしれないが、鳥好きにとっては寂しいものがある。人間生活に依存する鳥が増え、本当の意味での野鳥が減っているのである。
なぜ野鳥は減少したのであろうか?この疑問への単一の回答はない。が、ここに長年住むものにとって、あるいは酪農に直接関ってきたものにとっては、酪農の飼養形態が大き く関っているものと思っている。この質問に多くの人は、森を切って牧草地にしたからだと言う回答を用意する。しかし、増えた牧草地は30%もない。所によってはまったく変わりない地域でも、野鳥の減少は著しい。
かつての牧草地には、小さな昆虫が沢山いたものである。野鳥は餌に欠くことはなかったと思われる。多収量を目指して、牧草の品種が改良されて早刈りになった。おかけで、野鳥たちは子育てをする間もなくなった。化学肥料の散布量も増えてきたし、放牧の減少などで糞尿が発酵することなく牧草地に還元されるようになった。そうした複合的な要因が原因でないかと思われる。
酪農が大型化、高泌乳化することで、結果的に野鳥が追われる羽目になったものと思っている。しかし、この酪農も含めて農業の大型化は今後避けて通れない道なのであろうか?大地にも野鳥にも負荷のかからない農業こそが、持続可能な農業だと思うのであるが、日本はいま規模拡大しない農家は政策的に支援しない方針をとりつつある。拙書「そりゃないよ獣医さん」新風舎刊http://www.creatorsworld.net/okai/参照