日本は2002年から、かつてない好景気を続けてきた。多くの庶民に実感のないのは、景気の動向は経済で測られるからである。人の消費量ではないので実感がないのである。
この間企業はたんまりと溜めこんだり、株主への配当も増やしたりした。おこぼれをもらわなかったのは、労働者である。その典型が「非正規雇用者」たちである。これを支援したのが、小泉・竹中路線である。
今春闘を目前にいて、トヨタを見習えとばかり各企業は、それぞれ業績の悪化を立て続けに発表している。非正規雇用者たちの首を切りや、正規雇用者たちの賃金を下げることに腐心している。ワークシェアリングも基本的には同じである。
日本が最も成長した時期は、高度経済成長期と呼ばれる60年代から70年代である。これを支えたのは、終身雇用制度と年功序列を基本とする雇用関係であった。労働者にも賃金としての見返りもあったのである。雇用関係も安定していた。社会不安も少なく未来への夢があった。
GDPの60%を支えるのは、消費と言われている。企業側からの一方的な景気判断は、消費によって支えられ、それを担保するのが雇用者であったはずである。安定した労働者は消費者としても大きな意味をもっていることを認識していた。
企業内にあっても、正規雇用を続けることは、どんな企業にあっても大きな財産であったはずである。非正規雇用を促す政策は、企業内の人的財産・資源の放棄である。言いかえれば、人材とは企業の抱える本当の意味での、内部留保なのである。
お金としての内部留保を放出することなく、人的内部留保を吐き出す日本企業に未来はあるのだろうか?少なくとも、目先の春闘に向けてのパフォーマンスが展開されている現状は、運営者が醜態をさらしているとしか思えないのである。