日本は森林国家である。国土のおよそ70%が森林である。ヨーロッパに比べ、緯度も比較的低く日光量も多く、降雨量も多い。日本は植物にとって、極めて環境の優れたところである。つまり食料と木材は最も効率よく生産される地域なのである。(左図参照:クリックると大きくなる)
この国が、食料自給率が40%とは、人の営みのなせる我が侭によるものである。更に森林大国日本の木材の自給率は低く、僅か20%に留まっている。これは高度成長経済によって、経済大国になった日本が強くなった円で、外材を輸入するようになったからである。
高度成長経済を支えたのは、地方から都会へ移動した労働者である。その原動力になったのが、賃金格差である。賃金格差とは、農産物の価格低迷と輸入品への依存である。
この構図はそっくり木材に当てはまる。木材は、農産物が数年かかるところを、その10倍の時 間をかけて生産される。農業政策の視点ですら、毎年のように変わる猫の目行政と言われている。木材についてはその10倍の長期的な視点が必要なのである。
輸出工業製品の見返りとして、安価な外材を購入することで、国内の木材は放置されてしまった。右の表を見ていただければ解るように、この40年で放棄された植林(人工林)は5倍以上になっている。植林はほとんど放棄され、花粉を散布しているのである。
熱帯雨林の外材を輸入することで、熱帯雨林を破壊する。そして同時に日本の山林を荒廃させる。高度経済成長とはこうして、農業・林業の一次産業を衰退させてきたのである。
フードマイレージ(移動距離に重量を乗じたもの)と同じように、ウッドマイレージという考え方がある。輸入木材は重量もあり、二酸化炭素を大量に消費するのである。京都では、ウッドマイレージの評価(認証制度)を住宅に与えている。京都の木材だけを使うと、輸入材に比べて42倍も二酸化炭素の消費量が少なくて済むとのことである。
ヨーロッパの木材だけで作ったログハウスになると、地元の木材だけで建築した場合の約1000倍のもなるそうである。エコ住宅と宣伝されるが、ウッドマイレージの評価基準にしているとこ ろがほとんどない。
ところで、昨今の世界的な環境破壊の進行で、輸入材がとみに高くなった。さて国内の、広大な森林から木材と供給しましょうと言っても、100年の計もない日本の政策は、すっかり森林を疲弊させ、老化させている。今手をつけても50年先にならなければ、供給できないのである。儲かればいいという社会を突き進んできた日本の現実が田舎にある。