そりゃおかしいぜ第三章

北海道根室台地、乳牛の獣医師として、この国の食料の在り方、自然保護、日本の政治、世界政治を問う

企業のリストラに学ぶ

2009-02-26 | 農業と食

トヨタが発表してから、多くの企業が惜しげもなく赤字決算見込みを発表している。リストラばかりでなく生産量も大幅に減らす。車は前年同期の46%に落ち込んでいる。

農業はそんなことはできない。食料はなくすことは勿論のこと、半分に減らすことすらできない。また倍にすることもできない。食料は必要不可欠なものであり、人の命を支えるものである。

農産物は、車などの工業製品のように簡単に量産できるものではない。通常の作物で基盤があっても、1年かかる。休耕田でも3年はかかる。酪農は増産に、施設があって技術力などが揃っていて最短で3年かかる。

WTOなどでは、テーブルに出してこない、さまざまな農業保護を世界各国がやっている。先日、鈴木宣弘東大教授の講演を聞いた。教授によると、アメリカの酪農は「牛乳は国家の基本食料、酪農は公益事業である」ととらえている。乳価の下限は設定されているし、余剰乳は国で買い取るシステムが出来上がっているとのことである。欧米の乳製品は98%自給している。飲用乳はほとんどが、低温殺菌牛乳である。

日本では、農協ひいては生産者が価格交渉をやって、余剰乳が出ると生産調整を農家が請け負うことになる。酪農家はいっぱいバターを買うことになる。往診に行くとただでくれる。不足すると、懸命に穀物量を増やして牛の病気を多発させながら増乳する。

国家的な取り組みは各国でいくつも抱えていて、日本のように馬鹿正直にWTOのテーブルになんでもかんでも上げてこないと、鈴木教授は言うのである。事実、こうした騙し合いの結果昨年夏のWTOが分裂した。

インドがアメリカの国内保護政策を告発したのである。インドは自国の農民と食料を守るためには、平気で会議をぶち壊すのである。私は長年日本のこうした交渉を見てきたが、日本の農民を守るために、体を張って交渉した大臣も官僚も見たことも聞いたこともない。

食料に対する基本姿勢がこの国にはない。工業製品の売り込みで経済発展を遂げてきた日本は、農民をリストラし続けてきた結果である。食料生産(農業)と車生産(工業)とは全く異なるものである。40年かけてきた農民のリストラを復活させるには、その倍かかるであろう。WTOが経済効率ばかりで交渉される。いい加減に見直す時期ではないだろうか

フォトアルバムに「庭に来た鳥たち」をアップしました。

コメント (5)
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