経済については門外漢である。金子勝の「閉塞経済」を読んだ。読んだのは前半とその後のつまみ読みである。経済が一般の人にとって理解できなくなったのは「金融」が表舞台に出てきたからである。
金子氏によると、資本主義は「商業資本主義」から「産業資本主義」の時代を経て、「金融資本主義」の時代になっているそうである。金融危機が起きて、実体経済への波及が憂慮された。今の資本主義は実体が無視された体制なのである。
私たちは実体経済の中でしか生きていない。モノ作りを効率的に行い商品を市場に提供して いいた時代から、産業革命経て資本が大きくなるところまでしか一般の人間はついてゆけない。金融資本は、実体のないお金廻しの論理でしかない。一般の人たちを幸福にはしない。収奪の対象としかしないからである。
今起きている危機は3つある。一つは経済危機であり一つは行政の財政危機である。もう一つは、環境の危機である。これらを同時に解決するには、一旦商業資本主義の時代までさかのぼって考えなければならない。でなければ、実態が把握できないからである。そんな方法があるのかと思われるが、あります。
江戸時代の藩政改革にそれを学ぶことができる。米沢藩の上杉鷹山の改革である。為政者である藩主自ら身をただし、一汁一菜に徹し倹約に心がけることで範を示した。武士たちには収入に見合った生活をさせ、仕事を与え、産業を興したのである。
実体経済の最たるものが、農業などの地域産業である。鷹山は養蚕を勧め絹織産業を振興させ、養鯉や和紙製造など50以上の商品開発まで行った。
金融危機に対する視点に埋没すると、金のバラ撒きも納得する側面がなくもない。しかしそれでは、残りの危機を解決できない。財政はひっ迫し地球温暖化は進行するばかりである。
鷹山の教訓を今に生かすためには、地域に根ざした実体経済の主軸となる産業振興を行うべきである。その主体は農業である。日本は農業を捨ててきたからこそ、世界第2位の経済大国になったと言える。だからこそ、農業を立て直し自国の食料を国民に供給することが、現在の危機を救うことになるのである。