道路特定財源を一般財源にすると、唐突に発言したのは福田首相であった。党内での検討もなく、本人の思いつきの感が否めない発言であった。埋蔵金と言われる特定財源を見直そうとする、そのこと自体は歓迎すべきだと思われるが、党内の取りまとめも事前の論議もほとんどやられていない。
日本の公党はこうした、場当たり的な発言が得意である。特に、広い視野を持つことができない麻生首相には顕著である。この道路特定財源の、1兆円を地方に交付金にする。地方はどんな使い方をしてもかまわないと、ぶら下がり発言を行ってしまった。
もちろん党内での議論などなかった。道路族の巻き返しが始まった。特に古賀選挙対策委員長は、道路族のドンと言われている。選挙を牛耳る立場から、道路族を従えて一斉に反論した。高速道路のない、鳥取や宮崎をおとりにした脅しである。
結局、道路特定財源は「地域活動基盤創造交付金」という、厚化粧の名前をもらって、一般財源にしましたということになった。今日の予算委員会で、麻生首相が民主党前原副代表に 問い詰められている。
9400億円のうち何と8000億円は、使途を公共事業に限定された内容となっている。つまり道路財源として、ほぼ9割は使われるのである。
首相は「一般財源化してるよ」と、とぼけた回答を行っている。内容については説明していない。首相がまともに反応したのは、前原副代表がこれではやるやる詐欺だと言われた時にに、その言葉に怒っただけである。中身ではない。
税金の本来の目的がなくなったら、税体制を見直すのが本筋である。車を利用する度にかかる税金を、福祉や医療に用いるのは筋違いである。道路税はそんな目的で作られたのではない。税体制を見直すことなく、ダラダラと現状で余ったお金をとりあえず使おうとするのは、本筋を逸脱した行為である。
日本にはこうした、解釈でその場をつり合えず乗り切ろうとすることがあまりにも多すぎる。ソマリアの海賊対策でも、調査権のない自衛隊をとりあえず派遣してから、法律を作ろうかというのも同じである。減反政策も同じである。そもそも、自衛隊の存在も9条を解釈改憲で存在するようなものである。
何についても、腰を据えた落ち着いた本筋論議が余りにも少ない。場当たり的な対策が目につくばかりである。