公害の原点である水俣病を教訓に、水銀の採掘や輸出入それに水銀仕様製品製造の規制をする「水銀に関する水俣条約」が、今日(10日)、熊本市で開催され外交会議で採択された。
今後は、条約の効力が有効になるために、50カ国以上の調印を目指すことになる。このことについては、遅きに失している感はあるが、歓迎すべきことである。とりわけ全く規制のない、ブラジルやインドネシアなどの、金鉱山を抱える国々にとっては、いずれおきるであろう健康被害を抑えることにつながるものと思われる。現在、水銀汚染を抱える国は、20数ヵ国あるが、判明しているだけである。
議長を務めた、石原環境庁長官の「我が国が今を迎えているのは水俣の悲しい歴史があったからだ。短い期間で40、50という国が批准していき、条約に命を吹き込もう」とする呼びかけは、当然である。
開会に先立つ、安倍首相のビデオ挨拶は「水俣病を克服した日本と・・」と表現したが、身内を失ったり現在も苦しむ被害者たちの神経を、逆なでするものであったといえる。放射能は封じ込めていると言ったり、相変わらずのお坊ちゃまぶりである。
水俣病患者を抱える一方で、日本は水銀の輸出大国でもある。とりわけ、近隣の発展途上国には大量に輸出している。これらの殆どが、リサイクル水銀である。条約には輸出規制も盛り込まれている。水銀の最終処分場が決まっていない。放射性廃棄物に似た構造も持っているのである。
水俣のチッソで使われていた水銀は、北海道北見郊外で採掘されたものある。この鉱山は今では、重クロム酸などの化学物質の廃棄場になって、私も職場の化学物質を大量に持ち込んでいる。水俣病は他人事とは思えない。
日本は2000億円の援助をすると発表しているが、何よりも水銀測定などの技術は世界最高水準である。そうした立場に立った指導を望みたいものである。
ブラジルでは、金鉱山の下流域ではすでに、水俣病様症状が出ている。彼らは魚を食べているのである。本条約が一時も早く実効を持つことを期待する。