ヨーロッパから始まった、家畜を生きる生物として権利を認めようという運動が起きている。「家畜福祉」という考え方であるが、効率を追い求めてきた畜産業界からは、嫌われる概念である。
このなじみが薄く、TPPが現実味を帯びている現在、嫌うだけではなく今こそ普及させるために、今月12日に帯広でセミナーが開催される。私も、パネラーの一人として現場を知る獣医師として、時間を戴いている。
消費者は、健康な家畜から畜産物の肉や卵が生産されていると思っている。家畜を健康に保っていれば、生産してくれない。肉もつかないし、卵も産まないし乳の生産量も少なくなる。
最も生産効率が進んでいる採卵鶏の場合であるが、彼女たち(すべてが雌である)はわずかA3サイズ程度のケージに閉じ込められ、中空に置かれている。彼女たちは、閉鎖された暗黒の空間(鶏舎のことである)に1万羽以上も詰め込まれ、昼夜が調節されて10時間毎の夜と昼が演出されている。右の写真はスペインの家畜福祉団体のパフォーマンスである。
物価の優等生と言われた、鶏卵であるがこうした環境で生産されている。生き物としての自由はもちろんのこと、生存権さえない。既にEUではこうしたケージ飼いが禁止されている。
彼女たちを苦痛や拘束から解放してやろうというのが、家畜福祉の概念である。生産農家は、消費者の理解と政府からの支援が必要になる。
消費者の皆さんも、より健康な家畜から生産された畜産物を食べたいと思っているだろう。家畜福祉にたいする理解を戴きたいと思っている。