福島第一原発で地震後、爆発をしたりして放射能漏れ事故が起きるまでは、日本の電力関係者はチェルノブイリの事故を、「ソビエトという遅れた技術の国家が起こした事故」と見下げる発言を繰り返していた。そうした慢心が、後手後手続きの事故対策となって表れている。
それでは、チェルノブイリは事故後「遅れた技術」でどれほどのことをやっているのであろうか?昨夜放送された、「チェルノブイリから福島へ 未来への答案」は極めて興味深い内容であった。読売系列のNNNドキュメントであるが、反原発かそれに近い内容のものは、深夜に放映するのは、せめてもの抵抗であろうか?
新シェルターは建設中であるが、2000億円であるという。新しいシェルターは事故当時急遽つくられた、いたみが激しい石棺と呼ばれるシェルターを覆い尽くすのである。物理的に覆う以外にも、炉の解体と燃料を取り出す作業も行うことになるよう設計されている。
チェルノブイリで働く労働者は、一週間ほどの教育を受けて受験し合格して資格を取らなければならない。結構難解である。働く人たちは、放射能の知識と恐ろしさを教え込まれる。講師は訓練と教育がここで働く人たちに必要であると説明する。緊急訓練が定期的に行われている。さらに、事故が人的ミスで起きたことを反省して、心理面の訓練も行われている。
一方3000人働いている日本は作業員に、事故前の東電のパンフレット手を加えたものを用いて、数時間の講習がなされているだけである。それもほとんどが作業の説明であって、放射能についての説明はないという実態である。初歩的なミスが多いのは、こうしたことが根底にあるのではないか。
チェルノブイリでは燃料の取り出しについては、いまだ結論が出ていない。そのままにしておく方が安全という選択肢も、残しているのである。100年以上あるいはもっとかかるのであれば、そっとしておいた方がいいというのである。
脱原発を決めたドイツでは、廃炉にするため圧力容器に触れないで時間を掛けて、危険度を下げてからの作業を考えている。いずれも50年以上かかることである。
日本の場合には、融け落ちた燃料のある所も解っていない。チェルノブイリの人は、福島は急がない方がいいと言う。生まれ育ったところを離れた人たちは、「帰れるなんて考えない方がいい」「新しい生活を考えるべき」と忠告する。
ソビエトから負の遺産を受け継いだウクライナは、福島よりよっぽど真剣に事故後の対策に取り組んでいる。原発関係者が未熟な技術と揶揄した彼らから、日本は真剣に学ばなければならないのではないか。