先週のNHKのETV特集「海の放射能に立ち向かった日本人~ビキニ事件と俊鶻丸~」は、秀逸の作品であった。1954年3月1日に、アメリカがビキニ環礁で行った水爆実験で、日本の漁船第五福竜丸がいわゆる”死の灰”をかぶった。
周辺で獲られたマグロは、放射能汚染を受けて”原爆マグロ”と呼ばれ多くが廃棄された。死の灰、原爆マグロ、ガイガーカウンターなどの言葉が、子供心に鮮明に残っている。その後の第5福竜丸については、過去のこのブログで何度か書いた。下記参照
その後日本は、俊鶻丸(しゅんこつまる)に各方面の若き科学者を乗せてビキニ周辺の、海洋放射能汚染の調査に向かわせた。
アメリカは、放射能は海洋で薄められて無害になる、と主張していた。今回も東電の馬鹿スポークスマン、は同じことを言っていた。当時の岡崎外務大臣は、アメリカの核実験をみとめ、200万ドルを受け取って、被爆した漁船の補償などすべてをこれで打ち切らした。
俊鶻丸の調査結果は、アメリカの主張を覆すものであった。海洋汚染は海流に乗って深刻に広がり、死の灰はマグロの表面ではなく内部臓器に大量に蓄積されていることが判った。更に、食物連鎖によって凝縮されていたことも判明した。今では当たり前のことである。
アメリカの取った態度は、これ以降の調査の中止を政治的に決定したのである。その後イギリス、フランスと核実験が南洋で行われるにつれて、俊鶻丸の先進的な調査の意味が大きな意味を持つようになったのである。
残念なのはその後調査が継続されていれば、核汚染の実態が判明したであろうし、核開発の抑止にもなったであろう。
日本は冷戦構造の中でアメリカに従う道をとったことに加えて、原子力発電の開発に乗り出す政治的な動きもあって、世界で唯一の被爆国でありながら、核開発に手を染めていった経過の原点がここにあるのである。
翻って、60年後の現在を見ると、平気で海洋汚染を調査もろくにせず、ひた隠す東電と政府の愚かさは許せない。ましてや、汚染水貯蔵タンクに容量を超える量を貯めて溢れさせたりする初歩的なミスを犯す低劣な技術者たちは、60年前の俊鶻丸の若き精鋭の科学者たちの、気概を少しでも知るべきである。
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