経営が苦しいために、儲かるからと汚染米を食用に販売した、三笠フーズの社長が逮捕された。汚染米は、捨てるのが惜しいために、糊などの工業用として利用価値もあり、廃棄されることなく業者に販売されることになったために起きた事件である。
これを農の視点から見ると、極めて滑稽な報道と言える。WTO交渉の過程で、10年前に輸入せざるをえなかったおコメである。ミニマムアクセスとして、78万トンほど強制的に輸入されるのである。潔癖症の日本人が輸入米を、通常の食用に購入するとは思えないが、必要であろうとなかろうと輸入を強要されるのである。
当然のことながら、備蓄される率が圧倒的に高い。元々品質が良くないために、汚染されることがなくても、工業用にあるいはお酒などの加工用としてしか販売されることのない、極めて低品質の商品なのである。国内の農民には減反を強制しながら、こうしたものを輸入すること自体がおかしいのである。
交渉の過程であろうが結果であろうが、こうしたものを輸入すること自体が、日本の食料自給を全く考慮しない政策なのである。第一、汚染されたものなら、通常の商取引なら返却されるべきなのである。返却もせず国内で廃棄することもない汚染米である。これらを検査するのが、輸入元でも国内でも、農林官僚が天下った組織である。
半年も経ったとはいえ、やっと三笠フーズが逮捕されたことは歓迎すべきであるが、目の前に美味しいモノをブラさげて、それに手を出したら御用などとはちょっと三笠フーズに同情もしたいところである。それに今回の逮捕は、昨年だけのことである。本人は、10年前からやっていると言っているようであるが、お咎めなしである。しかも、逮捕理由は不正競争防止違反つまり不当表示だけである。
汚染米は、食の安全として報道されているが、本来は食糧自給の問題から派生した事件として捉えられるべき性質のものである。