詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

Estoy loco por espana(番外篇187)Obra, Sanchez Garcia Jose Luis

2022-09-10 09:05:53 | estoy loco por espana

obra, Sanchez Garcia Jose Luis
La costura (Pueblo del Sur) 41 x 33 cms

 

Color blanco. No se trata de un solo tipo.
Hay varios colores blancos diferentes.
¿Cuántos blancos he visto? ¿Cuántos blancos recuerdo?
Este cuadro me lo pregunta.

白い色。それは一種類ではない。
何種類もの白い色がある。
私は、そのうちのいくつを見てきたか。いくつを覚えているか。
この絵は、それを私に問いかけてくる。

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細田傳造「太政大臣」

2022-09-10 08:57:35 | 詩(雑誌・同人誌)

細田傳造「太政大臣」(「雨期」79、2022年08月30日発行)

 細田傳造「太政大臣」を読みながら、うーむ、と思う。

世の中を造っている
まかされて世の中を造っている
俺は太政大臣
ほらあそこ
水たまりでくるくる
水すましが回っている
いい世の中だろうだろう
俺は太政大臣
そこ行く新内流し
あなたに
かどづけは国庫から出す
いい世の中だろう

 何が「うーむ」なのか。まず、「太政大臣」。いま、いる? いないね。私は歴史にうといので、いつの時代まで太政大臣がいたのか知らない。わかるのは、いまはいないということ。いまいない「太政大臣」をなぜ書くのか。
 比喩は、いまここにあるものを、いまここにないものを借りて、何らかの意味を明確にする(強調する)ためにつかわれる。ほんとうは、それではないものを、それを借りることで、いまここにあるものを明確にする。
 では、細田の「太政大臣」は何を明確にしているのか。

世の中を造っている
まかされて世の中を造っている

 一行目に、「まかされて」ということばが追加されて二行目が産まれ、それを引き継いで「太政大臣」ということばが動く。何ごとかを「まかされている」人間だ。そして、その何ごとが何かといえば「世の中を造る」こと。
 それでは「世の中」とは何か。「造る」とは何か。そういうことが、少しずつ語られる。
 世の中が「水たまり」か。あるいは世の中が「水すまし」か。「くるくる」「回る」が世の中か。これは何かの比喩か。比喩かもしれない。しかし、ここでは、それ以上私は考えない。いいじゃないか、と思う。たとえば、私が「水すまし」で小さな「水たまり」で「くるくる回っている」だけ。対して不満はない。そうやって「くるくる回る」ことで生きているなら、それはそれでいいなあと思う。何より、平和だ。そうだろう、だろう。
 でも、そのあとはどうかなあ。「新内流し」は「水すまし」と違って遊んでいるわけではない。そのあとの、

かどづけは国庫から出す

 「かどづけ」か。まあ、必要だ。「国庫から出す」。えっ、「太政大臣」って、そういうことか。自腹ではせない。「国庫から」。「国庫」って、何さ。
 「かどづけ」をもらって、「いい世の中」と思えるかどうか。ここから「太政大臣」への批判をはじめることができる。でも細田は、そういうヒントを提示するだけ。細田が主体となって批判するわけではない。(読者が、批判をするのは、勝手。)細田は「おれは」と、細田自身が批判されることを引き受る用意があるというポーズを見せる。二重の批判だね。--この二重性は、細田のことばの重要な特徴だが、書いているとめんどうになるので、今回は省略。

 さてさて。
 なぜ「太政大臣」なのか、「新内流し」なのか、「ことづけ」なのか。
 そして、いまはつかわれない(?)そういうことばにまじって、突然「国庫」といういまつかわれることばがまじってくる。
 ここから、いろんなことが考えられる。いろんなことを私は考える。しかし、詩は意味ではなく、あくまでもことばなのだから、私は意味には踏み込まない。ことばにとどまって考える。ことばにとどまって考えたことだけを書いておく。
 ことばにはいろいろなものがある。「太政大臣」「新内流し」。これは「歴史」になってしまったことばである。これを比喩として把握し、そこに「意味」をつけくわえていくことでひとつの「暗喩」が成り立つが、その「意味」を私は解説したくはない。いまの視点からの解釈は、いわゆる修正主義だからね。つまり、なんでも正当化してしまうことができるからね。
 一方、「国庫」ということばがある。これは「太政大臣」「新内流し」ということばが世の中に生きていたときも、いっしょに生きていた。そして「太政大臣」「新内流し」「かどづけ」ということばが死んでしまったいまでも(「新内流し」を死んでしまったといってはいけないだろうが、「ストリートミュージシャン」のように生きているとは言えない)、「国庫」は生きている。「国庫」は、なんというか、時間を生き延びている。このことばには解釈はいらない。修正主義に陥らずに、そのままつかえる。
 そして、このことば、「いまも生きていることば」が、大げさに言うと、共時性と通時性を交錯させている。細田は「通時性」だけを語るわけではない。また「共時性」だけを語るわけでもない。いつも、それが交錯する。その瞬間に、怒りなのか、軽蔑なのか、悲しみなのか、笑いなのか、私は判断しないが、突然、「肉体」が瞬間的にあらわれて、「概念」というか「意味」を突き破って動く。
 ここで、私は「うーむ」とうなる。
 ほんとうは、それだけで「批評」になるはずなのだが(私がほんとうに目指しているのはそういうことなのだが)、私は「うーむ」だけで「肉体」を支える度量がないので、ついつい、あれこれと追加する。

 

 

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