中井久夫訳カヴァフィスを読む(194)(未刊・補遺19)
「囚われの身となって」の背景はわからないのだが、
とはじまる、その「民衆語」ということばがおもしろい。「民衆語」とはなにか。民衆の話すことばをそのまま書き記したものか。似た表現が三連目にもある。
「方言」。「方言」は「民衆語」だろう。その土地の「民衆」が話すことば。書かれた文字ではなく、口に出されたことば。
それが、次の連と向き合う。
引用されているこのことば、これは「方言(民衆語)」だろうか。「文語」である。どこにも「口語」の響きがない。
これは、どういうことだろう。
私は想像するのだが、「方言(民衆語)」というのは古いことばの形を残している。つまり「歴史のことば」、「文語」に通じる。
こういうことは日本語にもある。たとえば富山の古い方言(いまではいう人が少ないが)では、「歯茎」のことを「はじし」と言った。「くき」を「じし」と訛っているのではなく、これは「歯+肉(しし)」が変化して「はじし」になっている。「古語」の「しし(肉)」が残っているのである。
いつまでも残っていることばの力。そこに、「思いつづけてきた」が重なる。「思い」と「つづける」が人間を支えている。その「思い」に耳をすませるとき、「意味」は音を超えて自然につながる。
「方言」を「文語体」に訳した中井久夫の工夫、耳のよさが印象に残る。
「リッツォス詩選集」(中井久夫との共著、作品社)が手に入りにくい方はご連絡下さい。
4400円(税抜き、郵送料無料)でお届けします。
メール(panchan@mars.dti.ne.jp)でお知らせ下さい。
ご希望があれば、扉に私の署名(○○さま、という宛て名も)をします。
代金は本が到着後、銀行振込(メールでお知らせします)でお願いします。
「囚われの身となって」の背景はわからないのだが、
このところ民衆語の歌を読んできた私。
とはじまる、その「民衆語」ということばがおもしろい。「民衆語」とはなにか。民衆の話すことばをそのまま書き記したものか。似た表現が三連目にもある。
だが、私の感動の最たるものは
トレビゾンドの風変わりな方言の歌。
このさいはてのギリシャの民は
思いつづけてきたのだ、まだいつか救いが来るぞと。
「方言」。「方言」は「民衆語」だろう。その土地の「民衆」が話すことば。書かれた文字ではなく、口に出されたことば。
それが、次の連と向き合う。
だが、ああ、不運の鳥が「君府より来たりて」
「その小さき翼に字の書かれたる紙を載せ
だが 葡萄の樹にも果樹園にも棲まず、
飛び去りて糸杉の根かたに巣を作れり」。
引用されているこのことば、これは「方言(民衆語)」だろうか。「文語」である。どこにも「口語」の響きがない。
これは、どういうことだろう。
私は想像するのだが、「方言(民衆語)」というのは古いことばの形を残している。つまり「歴史のことば」、「文語」に通じる。
こういうことは日本語にもある。たとえば富山の古い方言(いまではいう人が少ないが)では、「歯茎」のことを「はじし」と言った。「くき」を「じし」と訛っているのではなく、これは「歯+肉(しし)」が変化して「はじし」になっている。「古語」の「しし(肉)」が残っているのである。
いつまでも残っていることばの力。そこに、「思いつづけてきた」が重なる。「思い」と「つづける」が人間を支えている。その「思い」に耳をすませるとき、「意味」は音を超えて自然につながる。
「読み、すすり泣き、胸のとどろきの高まり。
ああ、われらの不運、ギリシャ囚わる」。
「方言」を「文語体」に訳した中井久夫の工夫、耳のよさが印象に残る。
リッツォス詩選集――附:谷内修三「中井久夫の訳詩を読む」 | |
クリエーター情報なし | |
作品社 |
「リッツォス詩選集」(中井久夫との共著、作品社)が手に入りにくい方はご連絡下さい。
4400円(税抜き、郵送料無料)でお届けします。
メール(panchan@mars.dti.ne.jp)でお知らせ下さい。
ご希望があれば、扉に私の署名(○○さま、という宛て名も)をします。
代金は本が到着後、銀行振込(メールでお知らせします)でお願いします。