日本の漢字能力検定協会は、2007年の日本の世相を象徴する
漢字として「偽」の一字を選んだ。
今日、その同じ「偽」の字で韓国の大統領選を斬ったコラム記事を
読んだ。韓国のいわゆる進歩派知識人の観点を代弁するような
記事だと見てよい。
マイナーな韓国メディアの記事ではあるが、候補者の「偽」(うそ)
のみならず、大手メディアの「偽」(ごまかし)やハンナラ党執行部の
「偽」(非常識)、さらには検察の「偽」(怠慢)まで辛らつに批判した、
なかなか読み応えのある硬派なコラムだった。
仮にハンナラ党のイ・ミョンバク候補が大統領に当選したとしても、
イ氏本人のみならず韓国国民にとっても、様々な面で前途多難な
近未来を予感せざるを得ない内容だ。
大統領選は、19日の水曜日。
はたして韓国の国民はどういう選択をするのであろうか?
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■ [손혁재 칼럼]
‘거짓’과 ‘진실’의 싸움으로 변질된 17대 대선
[ソン・ヒョクジェ コラム]
「偽」と「真実」の闘いに変質した大統領選
(デイリーサプライズ 12月17日)
손혁재 경기대 교수
ソン・ヒョクジェ京畿大学教授(政治学)
日本の2007年は「偽」の年だった。日本の漢字能力検定協会が
この1年間に起きた事件を総合し1年を象徴する「今年の漢字」と
して「偽」を選定した。「偽」の意味は「にせ、うそ」だ。
- 中略 (※「偽」が露見した日本の諸事件の紹介など) -
韓国の第17代大統領選挙でも「偽」が横行している。ハンナラ党の
イ・ミョンバク候補は、党内の候補者決定選挙の時から数多くの汚職
疑惑に苦しめられた。イ候補陣営はノ・ムヒョン政権の政治攻撃だと
非難していたが、実際はハンナラ党内の対立陣営が提起した
疑惑の方がはるかに多かった。偽装転入疑惑、不正投機疑惑、
子どもの偽装就職とそれに伴う脱税疑惑だけではない。イ候補の
釈明にもかかわらず子どもの兵役免除についても疑惑がささやかれ
続けている。さらには選挙法違反で国会議員職を剥奪された前歴、
市営テニス場の私物化、「ソウル市献上」発言、ヒディング氏の写真
使用事件、「官妓」発言や「マッサージガール」発言等々に至るまで、
まさに疑惑や問題のオンパレードだった。
そして、最も大きな問題がBBK問題だ。BBK事件と関連して各種の
疑惑が提起されていたが、イ候補は「BBKとは直接しにろ間接にしろ
全く関係がない」と公言して来た。「たとえ後日になって、万が一にも
関係があったことがわかれば『無限責任』を負う」とまで公言した。
過去、中央日報や東亜日報、さらには日曜新聞などとのインタ
ビュー記事の中で「私がBBKを設立した」と述べた事実が明らかに
なったが、イ候補はそれらの記事を「誤報」と切り捨て難を逃れた。
問題はイ候補の「誤報」発言に対し、中央日報や東亜日報が
沈黙を貫いた点にある。「誤報」を認めるか、あるいは「誤報」では
ないと反論するのが当前の対応だと思うが、大手新聞社は口を
閉ざした。これもまた「偽」なる態度だと言える。
パク・ヨンソン議員が記者時代、イ・ミョンバク候補の案内でBBKの
事務室に入り、そこで氏にインタビューをし、その場にキム・キョン
ジュン氏も同席していたことを示す映像物についてもハンナラ党と
イ候補は事実を認めなかった。目の見える人なら誰でも見える
事実を否定する図々しい態度も、また「偽」なるものだ。さらにハン
ナラ党は、その映像物を見た者を処罰しろとまで選挙管理委員会に
訴え出た。こうしたあまりに非常識な態度も、また「偽」なるもの
だと指摘せざるを得ない。
しかし、検察がBBK問題についてイ・ミョンバク候補に嫌疑がないと
して不起訴処分を下したことで、イ候補は完全なる免罪符を手に
する格好になった。揺るいでいた支持率も再び40%台を超え、
過半数を超える得票まで見込める状況になった。しかし、今回、
イ候補が光雲大学の特別講義で「私がBBKを設立した」と語る
動画が公開され、検察も「偽」の側に立っていることが明らかに
なった。検察がイ候補に「嫌疑なし」との免罪符を与えたのは
「イ候補が実際の所有者であることを示す証拠が見つからなかった」
ことが理由だ。ダス社やトドク洞の土地の実際の所有者が誰なのか、
明らかにすることができなかったと言うのだ。したがって他人名義
での財産所有など、イ候補に提起された疑惑が十分に解明された
わけではない。さらなる捜査が必要であるにもかかわらず、検察が
捜査を打ち切っただけの話だ。
第17代大統領選挙が今の流れのまま進んでいけば、今後数年間、
韓国社会は「偽」なる社会になってしまうかもしれない。そうした理由
からなのだろうか。「韓国は後退の準備が完了した」などと報道する
外国メディアまで出てくる始末だ。韓国社会が「偽」なる社会に
後退するのか、あるいは「偽」を拒否して未来に進むのか。全ては
有権者の手に握られている。しっかりした有権者の注意深い選択が
全てを決めるのだ。「偽」か反「偽」か、それが問題なのだ。
(終わり)
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