熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

秋一色に染まる新宿御苑

2005年12月02日 | 花鳥風月・日本の文化風物・日本の旅紀行
   いま、新宿御苑の紅葉が美しい。
   よく晴れた日など、逆光を浴びたモミジが、錦に輝いている。
   新宿門を入ってすぐの遊歩道は、赤と黄色に染まったもみじのトンネルであるし、日本庭園のあっちこっちには、イロハモミジやヤマモミジが、真っ赤に色付いて、紅葉がたわわに垂れ下がり地面を這っている。

   朝夕の寒さがそれほど厳しくない所為か、京都の紅葉のように鮮やかではないが、それでも、木の下から空を見上げると、錦のモミジ葉が木漏れ日の間から風に小刻みに揺れて踊る風情は、万華鏡を見ているようで、感動的である。

   私は、この新宿御苑が、イギリスに居た時によく行った王立キューガーデンに似ていて懐かしいので、季節の変わり目毎に来ているが、比較的都心では感じられない季節の変化が、ここでは、存分に味わえて嬉しい。

   キューガーデンは、ロンドン郊外の世界屈指の植物園だが、広大な敷地の大部分は、イギリス本来の「風景庭園」に近く、大陸ヨーロッパにあるような幾何学文様の壮大な庭園とは違って、日本庭園のように不規則な非整形庭園である。
   イギリス本来のと言うのは、今日本で有名なイングリッシュガーデンと言うと野性的な花が咲き乱れたコテッジ・ガーデン(田舎風の庭)を意味しているが、本来は、殆ど花などのない広大な自然らしさに重きを置いた庭を言うからである。
   長い間、ヨーロッパの整形庭園が巾を利かせていたが、グランドツアーで出かけたイタリアで感激して持ち帰った風景写真を参考にして、貴族達が作った庭園が流行り出し、それが英国庭園となった。


   新宿御苑の日本庭園は、手入れよく季節ごとに剪定など行われているが、キューガーデンの場合は、どちらかと言えば、これよりずっとワイルドで、その分、野鳥なども群れていて自然が充満している。
   それに、最大の違いは、皇室の御苑に対して、キューガーデンは、世界に誇る植物研究のメッカで、保存育成されている植物は3万8千種で地球上の開花植物の10分の1で、植物標本は650万点、とにかく、巨大なものも含めて温室は6棟、世界中のビックリするような植物が集まっている巨大な研究機関でもある。

   新宿御苑のフランス式整形庭園(?)には、まだ、少し薔薇の花が咲いている。
   整然とした美しいプラタナス並木は、まだ、黄ばんだ葉が枝にしがみ付いている。
   イギリス風景庭園と御苑案内図に書いてある広い芝生の庭園は、これは前述したイギリスの風景庭園とは似ても似つかない庭園で、誤解を招くので表記を改めた方が良い。それに、芝生が高麗芝(?)なので、真冬に青々としている洋芝と全く雰囲気も違う。
   典型的な様式の庭園なら別だが、フランス、イギリスと名称をつけるならそれ相応の心構えが必要だと思うのだが如何であろうか。
   もっとも、世界のあっちこっちに、全く雰囲気の違った庭が日本庭園として紹介されているケースもあって、異国だからそれで良いのかも知れない。

   イギリスは、いくら人工的で、手を入れても自然らしく見せようとするが、日本の庭は、手入れが行き届いて丁度散髪直後の頭のように清潔で美しい。
   自然に対する国民性の違いであろうか。
   
   御苑には、大きな池があり紅葉が景を映していて美しいが、心なしか、都心の水辺なので人工的な感じで、一方、キューガーデンでは、自然の水鳥が川面に色々な巣作りをして雛を育てていて騒がしいくらいである。   
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする