熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

オバマ大統領:アメリカン・ドリーム

2014年01月29日 | 政治・経済・社会
   オバマ米大統領は28日、就任以来6度目の一般教書演説を行い、社会格差の是正に向け中間層の底上げに注力する姿勢を鮮明にした。
   私が興味深いと思ったのは、次のくだりで、アメリカン・ドリームについて語ったところである。
   They believe, and I believe, that here in America, our success should depend not on accident of birth but the strength of our work ethic and the scope of our dreams. That's what drew our forebears here. It's how the daughter of a factory worker is CEO of America's largest automaker -- (applause) -- how the son of a barkeeper is speaker of the House -- (cheers, applause) -- how the son of a single mom can be president of the greatest nation on Earth. (Cheers, applause.)

Now -- (sustained cheers and applause) -- opportunity is who we are. And the defining project of our generation must be to restore that promise.

We know where to start. The best measure of opportunity is access to a good job. With the economy picking up speed, companies say they intend to hire more people this year.

   成功するかしないかは、生まれではなくて、働くことへの倫理観の強さとどんな夢を持つかと言うことにかかっている。accident of birth と言う表現が、実に、良い。
   工場労働者の娘メアリー・バーラが、アメリカ最大の自動車会社GMのCEOになったこと、酒場の支配人の息子ジョン・ベイナーが、下院議長になったこと、シングルマザーの息子バラク・オバマが、大統領になったこと、を引用して、出自など関係ないのだ言って、アメリカン・ドリームが、まだ、健在であることを語っているのが面白い。
   あのオックスブリッジ卒のエリートばかりが首相になっていたイギリスで、サーカス芸人の息子であったジョン・メージャーが、サッチャーの後継者として、首相になった時の驚きも大変だったが、そんなケースは、歴史上結構あるのだが、やはり、新世界アメリカは、筆頭であろう。

   さて、現実には、経済格差の異常な拡大によって、貧困層の子供たちの就学率なり、教育水準の低さが、彼らの上昇機会を奪ってしまっていて、アメリカン・ドリームが、殆ど有効に働かなくなってしまっている現実を、オバマ大統領も認めていて、この演説でも言及しているのだが、議会が認めなくても大統領権限で、最低賃金を、10.10ドルに引き上げると息巻いているところを見ても、アメリカ経済社会を根本的に支えてきた中間層の底上げ、貧困比率の低下を企図した経済格差縮小は、喫緊の課題なのであろう。

   学歴ばかりが、成功の有力武器ではない筈だが、優秀な学校教育を受けて高学歴を実現することは、最近では、それを可能とする経済力が伴わなければ、殆ど不可能である。
   私の学生の頃には、経済的に苦しい家庭の子弟が、国公立の学校を目指していて、同志社の校庭には自家用車が駐車していたが、京大には、ポンコツの自転車しかなかったし、祇園祭の行列は、京大のアルバイト学生ばかりだったと言われていた。
   しかし、今と違って、勉強を頑張って、必死になってアルバイトをすれば、どうにか、国公立の大学を出られたと言う幸せな時代であった。今では、東大を出るには、かなり裕福な家庭の子弟でないと、受験戦争に勝ち抜けないので無理だと言う。
   結局、格差社会の程度が増せば増すほど、成功するかしないかは、経済力を伴った総合力の勝負であるから、経済ピラミッドの底辺に近づけば近づくほど、そのチャンスはなくなってしまうと言うことである。

   さて、アメリカン・ドリームだが、かなりのアメリカ人は、まだ、その存在を信じているようで、一時吹き荒れたティー・パーティー旋風や、強烈な共和党議員たちの保守思想などの存在を考えてみても、あるいは、あれだけ困窮生活に耐えている貧困層が、精々、We are 99%.のデモ程度で暴動を起こさないことを考えてみても、まだ、頑張れば未来が拓けると言う気持ちがあるのだろうと思う。

   私は、アメリカとヨーロッパでの拙い経験だが、これらの欧米社会と比べてみた場合、アメリカの極端な格差社会システムの存在や、ヨーロッパの貴族・エリート校優越の階級社会的な傾向が、希薄な分、日本の方が、はるかに、上昇可能社会であると感じている。
   欧米のトップ大学院や学術機関で学位なり資格を取るためには膨大な経費が必要だし、それなりのルートが必要だが、日本の場合には、東大など国公立の大学を出るのは、学力さえあれば、かなり、負担は軽い方であり、出さえすれば、それなりの未来は開けて行くであろう。

   私は、別に、東大など国公立大学を出ることが易しいとか、出さえすれば、未来が拓けると言うつもりで言っているのではなく、アメリカン・ドリームと比べて、日本社会の方が、アメリカやヨーロッパよりも、ジャパニーズ・ドリームがあると言うことを、若い人たちに信じてもらいたいと言うことである。
   NHK朝ドラの「ごちそうさん」で描写されているように、戦後でも、相当晩くまで、あっちこっちで、芋のつるをスジを取って食べる時期があったが、そんな貧しい幼少年時代を過ごした私でさえ、学生時代に歌った学生歌ではないが、フィラデルフィアの大学院を出て、ロンドン・パリを股にかけて歩いて来た。
   日本は、まだまだ、世界でも恵まれたチャンス社会であり、オープン社会であることを、伝えたいし、オバマが言うように、
   Our success should depend not on accident of birth but the strength of our work ethic and the scope of our dreams.だと言うことを信じたいと思っている。
   
コメント
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