地味鉄庵

鉄道趣味の果てしなく深い森の中にひっそりと (?) 佇む庵のようなブログです。

今はなき元静鉄車・福井鉄道300形

2007-03-21 17:06:09 | 地方民鉄 (中京北陸)


 静岡鉄道の車両を連続して扱いましたついでに、もと静鉄300形あらため福井鉄道300形をアップしてみましょう!
 静鉄300形は、地方私鉄の車両として非常に珍しい自社長沼工場の作品です。いや、地方私鉄に限らず大手私鉄でも自社工場製というのは余り例がないはず。パッと思いつくところでは西武所沢工場がありましたが、今では外注になっており、新興勢力のJR新津が圧倒的な規模を誇るという感じでしょうか (その製品が趣味的に面白ければ良いのですが。-_-)。あと地方私鉄では、近江鉄道が釣掛車や西武の部品を組み合わせ、220形を自前で製作しているのが最近の代表例でしょう。
 おっと、話が横道にそれてしまいましたが (^^;)、静鉄がかつて長沼工場で車両製造を手がけていたのは、恐らく他に静岡・清水の市内線やナローの王国・駿遠線なども抱え、それなりに一部門として成り立っていたからではないかと想像します。それでも、RP誌1984年の東海甲信越私鉄増刊号によりますと、これらの路線が消えるにつれて車両製造部門も昭和44年に整理されたとのこと。昭和41・2年に3編成が製造された300形は、その技術を示す最後の集大成だったことになります。



 300形は1000系の増備によって80年代中頃に廃車となりましたが、3編成すべてが福井鉄道に譲渡されたのは、静岡と福井のどちらも都市間短距離路線として性格が似ており、使い勝手が良かったからでは……と想像しています。
 ですが、福井入線にあたっては、前パン化・冷房化・大型排障器とステップの取り付け・国鉄廃車発生品ボックスシートの流用など相当大がかりな改造が加えられ、いかにも福井らしい電車になっているなぁ〜という感じがします。大きな車体を揺らしながら併用軌道をのんびりと走り、福井口からは一転してかなりデンジャラスな走りを見せていたのは、福井を訪れるたびに味わっておきたい楽しみのひとつでした (*^^*)。
 ただ、最大の問題は……3本中2本が広告ラッピングの対象となり、標準塗装車 (今回アップした画像) にはなかなか遭遇できなかったことです。訪れてみたら西武生に入庫で、300形の標準塗装を撮りたい!という狙いは全く空振りになってしまうこともありました……。
 そんな300形も、登場後約40年となり、昨年のちょうど今ごろ、岐阜600Vの車両たちと入れ替わりで廃車となりました (>_<)。その直前には、車体も車内も相当ボロボロ……。旅客数が減少し、昼間は小型連接車でも間に合うようになってしまった中、まさに目的と天寿を全うして廃車になったのでしょう。地方私鉄の良き時代がまた一つこうして去って行くのだなぁ……という哀しみにふけりながら、ボックスシートに揺られて300形の乗り納めをしたことが思い出されます。