日本の冷房中古電車の増備をはじめ日々刻々と変わるインドネシアの鉄道事情をフォローするため、定期的に現地発信のサイトを巡回するのが個人的習慣となった今日この頃。こういう遥か遠い国の話題すら、自室に居ながらにしてリアルタイムで手に入るようになったのは、まさにネットの効用というべきでしょう。
というわけで、現地ファン(勿論インドネシア人)がフリッカーにアップする画像の数々を観察していたところ……最近やけにジャカルタ=バンドゥン間の特急「パラヒャンガン」の画像が急増し、「まぁジャカルタでは身近な列車なだけに撮る機会も多いのだろう。それにしては大特集気味だなぁ……」と思っていたところ、突如「さよならパラヒャンガン」というコメントとともに、ガンビール駅の先端部が撮り鉄でパニックになっているシーンがアップされているという……(@o@)。
昨年夏のジャカルタ初訪問の際、特急「パラヒャンガン」でインドネシアの長距離列車の魅力を知った私は、その画像を目にしていきなり目の前が真っ暗になったかのような気分に……(T_T;;)。そこで、「まさか長年の歴史を誇る名門列車とされる「パラヒャンガン」が廃止されるなんて一体どういうことだ!悲しすぎる……」と思いまして、さっそくGoogle検索で関連情報を集めてみました。
すると……やはり事の根源にあるのは高速道路との競争でした。すぐにヒットしたジャカルタ英字紙の記事およびマレーシア英字紙の記事によりますと、ジャカルタ=バンドゥン間の移動は、渋滞さえ起こらなければ高速道路で2時間しかかからないため、最速でも3時間を要する列車では太刀打ちできず、インドネシア鉄道としてはついに従来の「アルゴ・グデ」6往復+「パラヒャンガン」6往復=計12往復体制を断念せざるを得なくなったようです。私が昨年夏に乗った際には、度重なる運賃割引攻勢やブカシ停車などの策を通じ、1等車(エクセクティフ)にはそれなりの客が乗っているという感触を得たものですが、そういえば時間帯によっては非冷房の2等車 (ビズニス) がガラ空きだったり、オール1等の「アルゴ・グデ」が僅か客車4両+食堂車1両という悲しい編成で走っているのを目にしたものです。一応記事中では、これまで平均50~60%の乗車率だったようで、日本の感覚から見れば十分利用されているではないか……と思うのですが、物価水準からみてもかなり安く設定された運賃が命取りとなっているとか……(乗車率80%で黒字とのこと)。
そこで今後は「アルゴ・グデ」と「パラヒャンガン」を統合して、通常は1等車4両+食堂車+2等車2両という構成としたうえで、39年の伝統ある列車名を残すかたちで「アルゴ・パラヒャンガン」を平日7往復運転するようです(週末は増発あり。統合・減便後の時刻はこちら)。基本は「アルゴ」として1等車のグレードをさらに上げつつも、同時に2等車を2両連結するという異例の編成構成とすることで (他の「アルゴ」特急はオール1等)、これまでの2等車利用客にも配慮しているのでしょう。また、従来「パラヒャンガン」の1等車は1両のみの連結でしたので、平日における1等車の輸送力の減少分は僅かということになり、デラックス高速バスに対する競争力はなるべく確保しておきたいという意図が伝わって来ます (片道31両分から28両分へ。→要するに、空いている2等車の輸送力を大幅に減らしたいようです)。なお、余剰となった客車は高速道路と競合しないバンドゥン~東ジャワ間の新設優等列車に転用するようです。
それにしても……趣味的には今後ジャカルタ界隈でアルゴ塗装と一般優等塗装の混結を日常的に見られそうで楽しみ……と思う反面、やはり最高に快適で車窓展望も極上なジャカルタ=バンドゥン間の特急列車が大削減されたことのショックは拭いきれません……。昨年バンドゥンの帰りに高速バスを使ってみた経験から申しますと、実際には高速道路の渋滞はひどく、明らかに列車の方が速いと思われるだけに、何故……という思いが一層募るのですが、一方の問題としてインドネシアの急速な経済発展の結果モータリゼーションが進み、ジャカルタ=バンドゥン間を日常的に移動できる中産階層において自家用車を選ぶ傾向が強まっていることが背景として大きいのかも知れません。
うーん、インドネシアの鉄道事情も常に流動しているようで・・・
他にも昨年夏の初訪問以来数ヶ月のあいだに、
(1) メトロ7000系のジャカルタ到着
(2) 東急8604・8610Fおよびメトロ5000系の帯色変更
(3) 日本製非冷房車6両の車体更新とトンデモ顔化
(4) 衝突で昇天かと思われた都営6151Fのトンデモ顔での復活
(5) スルポン線電化区間の延長
(6) ボゴール=バンドゥン間のうち、チアンジュール=バンドゥン間で毎日2往復の客車列車復活 (これであとはスカブミ=チアンジュール間が復活すれば、超絶に風景が良いといわれる西回り経由でのジャカルタ=バンドゥン間鉄道の旅が可能になるのですが……。いやその前に、日中もボゴール=スカブミ間で列車を運転して欲しいものです……)
……などなど、実にいろいろな新展開がありましたので、出来ればこの夏もラマダーン入りする前にジャカルタを再訪したいものですが、果たして時間を確保出来るのだろうか……と (苦笑)。他にも、休日にソロ市内の併用軌道上を走るSLとか、続々と塗装バリエーションを増やしている日本製DCとか (RP誌最新号でも紹介されていますね)、調べれば調べるほど訪ねておきたいところが増加中……(汗)。