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ミステリ感想-『幽女の如き怨むもの』三津田信三

2013年08月10日 | ミステリ感想
~あらすじ~
戦前、戦中、戦後にわたる3軒の遊郭で起きた3人の花魁が絡む不可解な連続身投げ事件。
緋桜という名を持つ花魁がいるとき必ず、3階から3人が転落する。
誰もいないはずの階段から聞こえる足音。窓から逆さまに部屋をのぞき込むのは「幽女」?

~感想~
恐るべきクオリティで怪異とミステリの融合に成功し続けている刀城言耶シリーズの長編第6弾。
前作「水魑の如き沈むもの」では「結界」なるものが平然と登場したり、大半の怪異が怪異のまま放置されたりと方向性に不安な転換が見られたが、今回もシリーズ中でも屈指のとうてい現実的な説明のつかないような怪異が起こる。
しかし終わってみれば本作は……と結末に触れるわけにも行かない。まあひと安心はした。

だが惜しむらくは中盤で、あまりにあからさまな伏線を置いてしまい、そこからするすると謎が解け真相までたどり着けてしまうのが非常に残念。一歩間違えばネタバレにつながる綱渡りもミステリの醍醐味の一つではあるが、あれは大半の読者が気づいてしまうのではなかろうか。
「陰摩羅鬼の瑕」のようなネタバレ前提の真相でもなく、優れたミステリの結末を途中で見抜いてしまうのは不幸でしかない。もったいないことをしてしまった。


12.
評価:★★★★ 8
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