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ミステリ感想-『セカンドタウン』嶋戸悠祐

2013年08月20日 | ミステリ感想
~あらすじ~
鼻の無い糞尿を食べる怪人に襲われた――肥溜めの底から救出された教師は、怪異譚を残し墜落死した。
塀の中に隔絶されたセカンドタウンで連続する失踪事件。
失踪した友人の残した奇妙な小説。外界から捜査に訪れた探偵の推理。そして明かされる世界の有り様とは?

~感想~
「ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」の優秀作を得た作者の第二作。
前作「キョウダイ」は韓流ドラマ・地獄篇といった鬼畜の所業だったが、今作は藤子・F・不二雄のSF・地獄篇といった鬼畜の所業。
「藤子不二雄の黒いほう」と聞いてAではなくFのほうを思いつく向きなら、今作を読んでF先生のいくつかのSF短編が浮かぶことだろう。これが漫画ならF先生の軽いタッチに救われるが、読者に想像を委ねられる小説となると、なんなら本編よりも熱の入っている作中作で描かれる、とある有名な都市伝説や、近未来の日本を舞台にした世界観、失踪事件の裏に潜む壮大かつ黒い真相と、かなりグロい描写が多いので苦手な方は取り扱い注意。
事件があり探偵が現れ謎が解かれトリックも仕掛けられるが、ミステリというよりも帯に書かれた通りの「R-18小説」と呼んだほうが据わりは良い。
最近のメフィスト賞よりもよほどメフィスト賞らしい、ぶっ飛んだ作品である。次回は何を書いてくれるのだろうか。


13.8.19
評価:★★☆ 5
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