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ミステリ感想-『リバーサイド・チルドレン』梓崎優

2017年10月11日 | ミステリ感想
~あらすじ~
カンボジア。ゴミ山から集めたゴミを売り、日々の糧を得るストリート・チルドレンたち。
日本人ながらその中の一人である少年ミサキは、リーダーである太陽のような少年ヴェニィの下でたくましく生きていた。
だが一人、また一人とチルドレンたちが殺されていく。人間扱いされず誰からも顧みられない彼らをいったい誰が殺すのか?

2013年このミス6位、文春7位、本ミス3位、大藪春彦賞


~感想~
衝撃のデビュー作「叫びと祈り」で斯界を賑わせた作者の長編第一作。というか現状この2冊しか出ていない。
ミサキ少年の目線で容赦なく描かれるカンボジアの過酷な現実は、平和な日本人読者からすれば目を背けたくなるほど。
だが作品自体の構造は意外なほどに王道のミステリで、誰からも顧みられないはずのストリート・チルドレンが誰になぜ殺されるのかという明確なフーダニット&ホワイダニットであり、また被害者の共通点を探るミッシング・リンク物でもあり、カンボジアという独特の舞台によるルールで描かれた異世界本格の空気も強い。
さらに事件と密接な関連を示す童話映画があらすじだけだが作中作として挟まれ、解決編では謎めいた風来の名探偵が登場。さらにさらに本格ミステリガジェットがもう一つ追加され、事件の動機はたった一言で表せるほど単純にして盲点をつき、豊富な伏線がフラッシュバックし、終わってみればとどめとばかりにさらなる本格要素が2つ追加と、もしや小島正樹ばりに一作に詰め込める限りの本格ガジェットを満載したやりすぎミステリなのではと思いたくなる。
題材が題材だけに不謹慎厨が湧いてきそうだが、隠し切れないほどの本格ミステリ臭もこの作品の魅力の一つであることは疑いなく、またさらに不謹慎厨を招きそうだがカンボジア・グレンラガンといった少年の成長譚としての側面も見逃せず、多彩な読み方を受け入れる、一読忘れ難い良作である。


17.10.9
評価:★★★☆ 7
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