東方のあけぼの

政治、経済、外交、社会現象に付いての観察

どぶさらい遺伝子:管理組合という悪文化(3)

2006-07-14 08:37:14 | マンション管理組合

永井荷風の次はユングだ。目をまわさないでもらいたい。江戸耽美趣味から精神分析だ。集団的無意識の教養が必要だ。めまぐるしく引き回して申し訳ない。しばらくご辛抱を。

父親からオチンチンをちょん切られる恐怖を世界の基礎にすえる壮大な偏執気質のフロイトには到底付き合えないが、ユングの集合的無意識というのは結構つかえる。後天的に獲得した形質も遺伝するというラマルクの説は否定されている。いわんや心理的な性向は遺伝しないとされている(常識の世界では)。

しかしだね。そうともいえないのだ。ユングの集合的無意識というのはそういう常識に対する反論でもある。ユングの考えているスパン(集合的無意識が人類の脳基底に沈殿染着する期間)は万年単位だが、わずか2,3百年でも集合的無意識が形成され遺伝する事例をユングにたいするオマージュとしてお示ししよう。

場末の長屋では夏になると住人総出でどぶを浚ったものだ。藪蚊が大量に発生するし、不衛生だからだ。長屋の強迫観念となっていた。そういう父祖の思い出は現代の住民にも遺伝している。場末、下町のマンションでは配水管の清掃作業が管理会社によって行われるが、留守をしていて協力しないと村八分にされる。鍵を預けていけと怒鳴られる。見ず知らずのマンションの住民にだよ。

マンションの掲示板には「不届き者」の名前が掲示されるという恐ろしい目にあう。どぶさらい遺伝子健在なりだ。とにかく、現代版どぶさらいの時期になると無性に住民は張り切るのだ。お屋敷町のマンションでも定期的に配水管清掃は行われる。しかし、ここまでヒステリックな盛り上がりは見られない。粛々と行われるのだ。たかが、どぶさらい、されど、どぶさらい、だ。こんなつまらないことにも社会学、遺伝学そして精神分析学の貴重な観察例があるのだ。学問の楽しみのたねはつきない。