民主党政権になって初めての防衛白書が9月10日の発表された。なんと、普天間基地を海外に持って行くと豪語していた政党とは、とても思えない自民党政権と全く同じレベルの防衛白書 である。これは明らかに、鳩山由紀夫に、普天間基地の必要性とアメリカ軍の抑止力を説いた、官僚の作文である。
今回の白書の特徴はなんといっても、平成12年比で中国が2.26倍に、ロシアが8.63倍の膨らんだ軍事費を大きく掲げている点である。更には北朝鮮の脅威が高まっていると、ことさらに周辺国の脅威を強調する内容になっている。こうした内容は、自民党政権下よりもさらに右傾化していると思われる。
こうした近隣諸国の脅威が高まっているにもかかわらず、我が国はこの間に軍事費を0.96に落としているというのである。この白書はまず第一に軍事予算獲得のための情勢分析となっているともいえる。つまり省益が最優先される内容となっていると言える。官僚作成の白書であるので当然の結論である。これは、脱官僚を掲げていた民主党の政治姿勢の根幹にかかわるものである。
そして、矢張りというべきか当然というべきか、沖縄基地は鳩山の行った「日米合意」の正当性と、普天間基地の必要性を説いている。鳩山が今年5月になって初めて知った(!)とする、米軍の抑止力の必要性をことさら強調する結果になっている。特に前述国家との、距離的にも重要性を強調している。アメリカが、グアムへと主力を移行させようをするのを拒むかのように、沖縄の位置的意味合いを掲げている。アメリカにもう少し沖縄に居てくださいといわんばかりである。
鳩山の2枚舌に翻弄されたこの8カ月であった。とりわけ沖縄県民は、今回の名護市議選の結果を見ても少しもぶれていない。普天間の移転(拡張?)がすんなりいくとは到底思えない。白書はそのような、沖縄県民の感情など全く考慮していない。
選挙前には、沖縄で党首が普天間基地を最低でも県外に持って行くと、県民を騙し発言を繰り返している。誰もが、沖縄に限らず日本の米軍施設が、政権交代でかなり減らされることになると期待を持ったに違いない。今回の防衛白書は、普天間基地移転でそうした期待感を打ち砕いた上に、もう一度失望させる内容であったと言える。そうした意味で、自民党以下の防衛白書といえる。