今回の福島原発事故で、これまで築き上げてきた日本の食糧の安全が、根底から崩れてしまった感がある。BSE(狂牛病)以降、日本の農業、中でも畜産は、懸命に安全で生産者が見えるようにと、必要な経費と時間それに法律まで作って、築き上げてきた。
日本の牛の耳には10ケタの番号の装着が義務付けられて、誰でも簡単に生産履歴を見ることが出来るようになった。このトレイサビリティーと言われるシステムは、一夜にして作られたものではない。
農家やそれに関係する多くの人たちの努力と、経費によってつくられてのである。日本の牛の全てに、10ケタの番号が装着するのは容易なことではない。世界に類例のないシステムである。生産経歴の解らない輸入牛肉との、差別化を図る手段となり消費者の信頼を得るものとなった。
ところが、農家のこうした努力を根底から突き崩す事態が起きた。原発事故である。今や日本中に広がった、放射能汚染稲ワラのおかげで、国産牛肉を積極的に買う人がいなくなった。
輸入牛肉の方が安全ということになったのである。東電の犯した罪は大きい。一夜にして国産より、輸入牛肉の方が安全ということになったのである。
世界で10億人が飢餓に喘いでいる中でも、日本に平然と家畜用に無関税で輸入される穀物が、2000万トンある。安価な穀物によって支えられる、歪な日本など先進国の畜産事情である。
福島原発事故は、こうした歪な畜産事情を助長する結果になてしまった。国産の飼料を食べる牛肉より、輸入穀物を食べる鶏肉や豚肉の方が安全になってしまったのである。
また酪農でも、牧草地で自由に草を食べる放牧の方が、危険であることになってしまった。牧草地が汚染されているというのである。本来の飼養管理より、歪な管理の方が安全になってしまった。
前回当ブログで書いたが、これは稲ワラや牧草だけに限られて、汚染しているのではない。他の作物はどうなっているのか、詳細な汚染実態が不明のまま、農家はコメなどを作付している。
牛肉に始まった、農産物の放射能汚染はその他の農産物に影響がないわけがない。詳細で確度・信頼度の高い汚染実態が明らかにされなければ、この解決はない。放射能被害は、風評以上にい広がる可能性を持っている。