稲ワラから内部被ばくした牛たちが全国のあちこちで見つかり、北海道を含む東日本のほとんどの自治体が、すべての牛肉を放射線検査をすることになった。農家には何の落ち度もない。一方的に、東電によってもたらされた被害である。
政府はこれを支援すると発表している。技術的な支援や自治体を越えた取り組みなどは、当然支援なり指導があってしかるべきである。
しかし、国が資金援助するのはおかしい。税金で賄うというのであるが、国民が負担するというのは納得がいかない。加害者の東電が支払うべきである。
更に、検査能力などの問題から、この間に出荷出来なかった牛たちも国が買い上げるというのである。これも税金で賄うというのである。
農家の被害は出荷できない牛や検査費用だけではない。それらは、営農するものにとって極く一部のことでしかない。単に一時的なものでかない。
なにかと風評被害が取りざたされるが、今回の牛の内部被ばくは風評被害を明らかに越えている。いくら全頭検査しても、落ち込んだ牛肉の消費がすぐに回復するわけではない。
現在日本全国の、肉牛生産者と酪農家を困らせているのが、牛の価格の急速な下落である。一般的な酪農家は、牛乳販売の10数%の個体販売が収入になっている。肉牛農家は、下落しただけではなく出荷もできない。
これらの現象は、東北の限られた地域にだけ起きているのではない。この損害を誰が見るのか。算定が困難などの理由から、被害対象にはならないであろうが、金額としては最も大きい。範囲も広い。問題も深刻である。
「原発は事故に寛容でない」これは、世界に先駆けて脱原発を掲げたドイツのシュレーダー前首相の言葉である。二度と再び原発に手を出さないためにも、電力会社に被害のすべてを支払わせるべきである。