多くの日本人は実感していないようであるが、食料危機は確実に現実のものになりつつある。世界の食料は、61億人が生きていくために、何とかなる程度を生産している。
しかしながら食糧危機が、現実味を帯びているのは単に偏在していいるからだけである。偏在の一つは、富める国へ集中し貧しい国の人たちが飢えているのである。
偏在のもう一つが、富める国の家畜が大量に穀物を消費しているからである。貧しい国の人間は飢餓状態であっても、富める国の家畜は生産を上げるために大量に穀物が投与されて、肥満に喘いでいるのである。
食糧の偏在あるいは特定の国々への集中が、世界市場の穀物価格を吊り上げることになり、貧しい国は更に手が出なくなるのである。
今ここに、巨大な人口を抱え経済成長を背景に、僅かばかりあったバランスを崩す形で存在を大きくしてきた。
現在中国の食糧自給率は95%である。が、この数字は虚構に近いものである。長期的に続く豊作があるが、その背景は科学肥料などによる一時的な、増収と思える。1人当たりの耕作面積が、温暖で気候に恵まれているとはいえ、世界平均の3分の1程度しかない。
急速な都市化が、農地を宅地あるいは工業用地へと転換し、今後の増収が見込めない。現在12億の人口が10年ほどで15億になる。こうした客観的な予測は、
世界第1位の、外貨準備高はいつ穀物の購入に走るか解らない。経済的に豊かになると、動物蛋白の摂取量が増え、家畜飼料の国内消費が増大する。
こうした客観的な情勢は、日本の10倍の量と速度で進行することになる。最も不足すると言われている水の奪い合いが、農業と工業とで競い合うことになる。現在のままだと、工業が相当量奪うことになる。
こうして中国は、これから起きる世界食糧危機の主役となるのである。