この国の経済成長は、確かに輸出産業が担ってきた面が少なくない。しかし、発展途上国が力をつけて、対等な権利を要求し始めた現在になっても、それが可能なのだろうか?
いつまでも、自動車を売り続けることができなくなってきて、アメリカはもちろんのこと、世界各国に日本の自動車産業の生産拠点は拡がっている。
現実に日本のGDPに占める、輸出産業の比率は25%に過ぎない。韓国に遅れた理論がまかり通っているが、この国はそれが95%にもなっている。比較することすら意味がない。
国内需要が高いことはそれだけ、寛容力が高いことを意味する。TPP参入でそれを下げることが、どのような意味を持つことになるか。
先進国の農業は、農家所得の90%が補助金であるが、日本はわずか15.6%でしかない。関税を上げることで農家補助のレベルを下げるようアメリカ指示されてきた結果である。それが一転、TPPでは関税そのものをなくせと言い出したのである。
TPPに政治生命をかけた、オバマが次期大統領になる確証はない。むしろその可能性は低くなっていると言える。そのオバマと、事前の交渉を重ねても何の意味もない。
TPP参入と強い農業の確立など、農業の現実を知らない政治家や経済学者やドジョウの空論でしかない。
1俵3000円以下のアメリカのお米に、1万4千円程度の日本のお米がかなうはずがない。レベルが全く異なるのである。努力や品質で対抗などの域の問題ではない。まるで原爆を使われた国に、竹やりで抗する戦いを鼓舞した政権のようである。
オバマが医療保険に政治生命をかけなければならないほど、アメリカの医療保険制度の壁はあつい。富裕層には美味しい保険制度を提供したい保険会社は、現行の日本の保険には参入できない。
彼らは医療保険の規制緩和を言い出すことは、火を見るより明らかである。これは日本の医療制度の崩壊につながる。TPPはそのきっかけを、アメリカに提供することになる。
食料と医療を奪われて、人口問題や環境問題が目前に迫っている今世紀、何が最も重要なことであるかを、今一度真剣に考えなければ、日本には廃墟の町が増えるばかりになる。