今回の震災が起きた直後、正確には4月初めに環境庁から、日本各地に自治体にがれき受け入れについての要請のメールが、協力依頼の形で打診された。当初は、国難といえるような事態に処理不能ながれき処理への、人道的依頼であった。
政府の要請を受けて、6月には全国から574の自治体や廃棄物処理組合などから受け入れ容認の回答があった。この時点では、放射性物質についてのことは、まったく触れていない。
7月になると、政府与党を中心になって野党をも取り込む形で、がれき処理の法案の作成が始まった。この法案は、がれき処理法と呼ばれているが、8月末に全党一致で可決された。
その直前には、放射性物質は100ベクレル以上とされていたのであるが、突如として8000ベクレル以上が、放射性廃棄物と”法的”基準とされた。
つまり、8000ベクレル以下は放射性でないから、がれき受け入れを表明した自治体は、法的には受け入れざるを得ないということになった。
さらに政府は、10万ベクレルまでは埋却方法を上手くやれば、一般廃棄物になる。さらには、ある一定の厚さのコンクリートで覆えば、10万ベクレル以上であっても、処理しても良いと言い出した。
こうした政府の手の内を最初は明かさずに、お人よしの田舎の自治体に、放射性がれきの受け入れを認めさせようとする、卑怯ともいえる手法に、多くの住民から異論が出てきた。
私たちも、この町で「がれき拒否の会」を結成して、町へ受け入れ拒否を申し出たが、お上を信用する役場は全く対応策すら考えていなかった。
しかしここにきて、受け入れ表明をしていた自治体などは54と、僅か9.4%になった。90%以上が拒否したのである。
政府の、人道的対応に負うようとした国民への裏切りが、かえってがれき処理の道を遠くしたといえる。これまで何度も見てきた構図でもある。