アメリカ同時多発テロから、10年目の今年中東は民主化の風が吹き荒れた。アメリカは、イラクに民主主義を輸出するとか言った手前、歓迎する振りを見せていた。
中東の民主化で最も比重を持つのが、エジプトである。GDPや人口さらには位置的にも重要であるが、なんと言ってもイスラエルとの関係において、エジプトの動向は大きな意味を持つ。
そのエジプトが、市民による民主主義を目指し、ムバラクを倒したのであるが、何せ若者たちである。武器はインターネットである。統一性のない若者集団であることに変わりない。
ここにきて、これまで押さえつけられていた、イスラム主義者が台頭して きた。中核になっているのが「ムスリブ同胞団」である。支持者は、1500万人とも言われている。ともかく、ひとつのまとまった統一性のある、団体が政治集団として登場してきたのである。
政変の主流であった若者たちが目指す「市民国家」と、政教分離で抑圧されてきたムスリブ同胞団が目指す「イスラム国家」とが、大きく対立する構図になった。
軍部による暫定政権が、ムバラク政権の一部を取り込んでいると、連日若者たちのデモが続いているが、数十名の死者を出している。
さらには、アルカイダを支持する集団も頭角を現してきたのである。国内10%程度のキリスト教、コプト教の教会などが放火破壊され人も殺されている。
しかしいずれにしても、これらの混乱は親アメリカの政治団体が登場するとは考え難い。イスラエルを抱き込み、アメリカは民主化されたその時どう動くか見ものである。