予算委員会で自民党の佐藤ゆかり議員の質問で、野田はうっかりと「ISD条項は寡聞にして知らない」答えたのである。TPPが実行された段階で、必ず起きる国家間の行き違いに関することである。
ISD(Investor-State Dispute)条項とは、企業と国家の紛争に関する取り決めである。一見当然のように思えることではあるが、企業側が国家に損害賠償を請求することであるといって良い。訴訟国家アメリカのためのものと言ってよい。
圧倒的なアメリカの国威を背景に、アメリカ企業が相手国を訴えることが断然多い。NAFTAでは、メキシコとカナダが何度も、アメリカ企業の被害に合っている。無理を押し通すアメリカらしい。
例えばアメリカ企業は、廃棄物処理場の建設ができなかった損害を要求して、メキシコ政府から1600万ドルいただいている。オーストラリアはアメリカとのEPA締結に当たって、ISD条項の締結を拒否している。締結させられた韓国では、毒素条項と呼んでいる。
訴訟は原則非公開であり、上告はできない。企業が被った損害について、受け入れ側の国内法より条約が優先される。企業側にとって、極めて有利な訴訟が起きる可能性が高い。
こうしたことが、今頃になってボロボロ出てくるのは、いかにこれまで検討すらしてこなかったかが分かると言うものである。第一首相の野田すら知らなかった。
TPPは来年の大統領選に不利な現状を打開するために、日本に向けて打ち出したものである。これに乗ることはどこまでもアメリカに隷属することを意味する。