EU圏が揺れている。発端となったのは、ギリシャの債務問題である。債権過剰の国は、頭文字を取ってPIIGS(ピッグス:ポルトガル・アイルランド・イタリア・ギリシャ・スペイン)と呼ばれている。
さてそのギリシャであるが、なぜこうまでなったのか。報道は、粉飾決算とルーズな国民性や、公務員の多さばかりを伝えている。
今ギリシャはこれらの多くは、債務を不当債務として返済義務がないと定義付けようとしている。不当債務とは、何か?
1927年にロシアの、アレクサンドロ・ザックは次の3点が揃った時に”不当債務”と定義され、返済義務はないとしている。
すなわち、①国民の承認がなかったこと ②その融資が国民にとって不利益になったいること ③それらのことを貸し手が知っていた場合、である。
今世紀になって、不当債務との定義を恐れながらも、同様に先進国は処理した例がある。イラクである。融資各国は、アメリカに習いフセイン後のイラクに対して、返済金額の削減をすることで応じたのである。
不当債務を訴えている国家もある。南米のエクアドルである。IMFを通じての債務の多くの返済を、拒否したのである。融資が、アメリカ企業の参入を前提にして行われ、投資後のインフラも富裕層を豊かにし、格差を生じさせた。その債務を、国民の税金で支払う必要はないとしたのである。
ギリシャもあまり変わりない現実が分かってきている。粉飾決算が問題視されているが、内外の債券価格差を巧みに取り入れた手法で、帳尻を合わせたのである。
これに協力したのが、ゴールドマンサックス社である。この会社が得た報酬は、数百万ドルと推定されている。粉飾が発覚するまで、債務局長をしていたのが、ゴールドマンサックス社の職員であることが分かっている。
ドイツは、武器の購入を前提に債権を発行させている。フランスに至っては、フリゲート艦4、潜水艦6隻など、合計30億ユーロの武器を売りつけている。オリンピック施設も、税金で支払う羽目になっているのである。
いずれも、ギリシャにそんな金があるはずはない。ギリシャの債券発行を促した国々にも責任はある。国民は知らなかった。
エクアドルは、債務監査委員会を立ち上げ、負債の詳細を検討してた。その結果、70%は不当債務と判断した。
国民が、医療や福祉や輸送など生活に困難をきたしている。したがって不当債務は支払う義務はないとしているのである。
ギリシャも、債務監査委員会を立ち上げようとしているが、反対勢力や踏み倒されると困る国々の圧力で、困難な状況にある。
報道は、ギリシャは税金を支払わないとか、働かないとか、公務員が多すぎるなどと瑣末な内容を伝えているが、食い物にされた国家を更に叩く姿勢は許されるべきではない。