18日のNHKの、「徹底討論 TPPどうなる日本」を聞いた。TPP推進側から、政府から古川元久国家戦略大臣、山口荘外務副大臣、推進派から田中仁、反対派から鈴木宣弘、榊原英資のメンバーであった。
推進側に偏った人事といえる。討論の中身は実にお粗末であった。反対派の二人の質問に、正面から答えられた内容はなかったといえる。
古川は「参加しなければならない」「前進しなければならない」といわば、精神論のような内容である。具体的な問題や、説明の矛盾を疲れると「交渉すればよい」「これからの問題」などと答えるだけである。交渉ごとであるから、手の内を見せないようにしているのだと、結局まともな回答はなかった。
国益に沿わないことはやらないとの発言も抽象的である。無関税システムそのものが、食糧生産を落とし医療や食の現状を低下させ、地方を疲弊させる。このことだけでも、TPP参加は十分国益に反する。
野田首相が「すべての品目・サービスを対象にする」と言ったとか、言わなかったとかは、極めて重要な問題であるにも拘らず、政府側の二人には何の回答もなかった。
アメリカ従属主義者の田中仁にいたっては、アメリカとの交渉は早く取り組まなければ、それこそ大変になると早期の参加こそ重要論を繰り返す。
日本の農業は危機的状況にあるため、保護することすら問題のような言い回しであるが、鈴木氏のこれまでの農業政策の結果である、との主張に反論はできない。そうした政策の延長になる、無関税条約の導入はさらに問題を大きくすると、鈴木氏は指摘する。
TPP推進派の人たちが何度も主張した交渉力についても抽象的でしかなく、最終場面で司会者が「与党内ですら割れている状況で強力な交渉ができるのか?」の質問に、古川は口を閉ざした。
そうしたことを背景に、野田は玉虫色の協議姿勢をAPECに持っていったが、いい加減な姿勢であると無視される始末である。はっきりしてから来いと言うわけである。
全国町村会が3度にわたって、TPP参加反対を打ち出している。44の府県議会も、「反対」あるいは「慎重」に取り組むよう決議している。
早い話が、前のめりに交渉に取り組もうとしているのは、政府だけではないか。