政府はTPP参加に向けて、コメ政策を起きく転換させようとしている。減反政策の見直しや、民主党の行った戸別補償も段階的になくす意向である。
そして意欲のある農家を支援するとのことであるが、意欲ある農家とは規模拡大をする農家のことである。農業の機能や食料としての質は問うこともなく、単に量を求めるだけである。
その中で、飼料用に転作することも奨励している。5年間で40万トンまでにするとのことである。飼料用のコメは余ったら回すのではなく、味も生産方法も問われることもない大型の稲の作付をするのである。
10アール当たり8万円、収量が上回れば最大10万5千円まで助成する。10アール当たり800キロの生産とすれば、政府と地方自治体の多面的機能の5000ほどを加えると、トン当たり13万円ほど支払うことになる。全体で1000億円ほどの高額な財政支出になる。
現在日本は家畜飼料用のトウモロコシを、2000万トン近く輸入している。すべてアメリカであると言って良い。飼料用米はこれに充てるとのことである。この輸入量が抑制されることになる。アメリカが、このことを容認するはずがない。
アメリカの穀物生産団体のロビー活動は、最も盛んで強力であり実績もある。彼らの圧力で、日本政府は飼料用米の生産に歯止めをかけることになる。
何よりも、現在の家畜は、豚も鶏も牛もトウモロコシを消化する能力を、特定して改良が進んでいる。牛にコメや小麦のようなでんぷん質を与えても、嗜好性が低く食べてくれない。おまけに第一胃で硬化などもあって、消化がうまく行かない。
飼料用米は畜産農家の消極性もあって、流通の問題が必ず生じる。そうすると加工用などに不正の転出が起きて、社会問題になる。
何よりも、人の食べてもらうために生産する稲作農家が、飼料用米の作付に意欲を持つことがなく、高額な助成であっても生産量が伸びることはない。
したがって、飼料用米への転作奨励は”画餅”に終わり成功することはない。