美味しんぼを巡って、風評が懸念されると各方面から、この記事(漫画)に対して異論が出ている。確かに風評被害は困ったものである。
その典型は、某町で国内初のBSE(狂牛病:牛海綿状脳症)が生まれた町という理由で、ホタテなど海産物もイモなど農作物も、町内産というだけで売れなくなってしまったことがある。これが風評被害である。あってはならないことである。
ところが、ともすれば風評被害の可能性を盾にして、加害者の犯罪性を隠ぺいする、そうした動きがみられる。更には、被害の実態を直視しないことにつながり、将来に禍根を残すことになる。
美味しんぼ問題に安倍首相は、「根拠のない風評として国として全力を挙げて対応する」と発言した。権力者の発言であるが、取りようによっては言論弾圧にもつながることである。
この男はつい最近も逆からの発言をしている。水銀汚染に関する水俣条約会議に向けたビデオで、「水俣病を克服した日本だからこそ・・・」と発言したことである。水俣病は現在進行形で、同条約批准の2か月後には新たな訴訟も起こされている。
この発言は、被害者の神経を逆なでする、感情的なものに留まらない。水銀の定量方法も古いままだったり、被害認定も未だに係争中だったり、何よりも住民調査は一度もやられていない。とてもじゃないが、克服などしていると思えない。
この発言は風評被害をなくそうという、意図があるとみられても仕方がない。住民のためではなく、加害者を保護するためである。風評被害を盾にすることで、事実を隠ぺいし加害者を赦免することにつながる。事実、福島の放射能汚染問題では、いくつもの隠された事実があったり、意図的に調査されなかったことが数多くある。ばれると後から出してくる。何度見たことか。
住民に無意識に容認する意思が働くのは、風評被害への恐れである。
政権側は都合の良い場面で、風評被害を恫喝に使っている。重要なことは事実の確認作業であり、その情報の公開である。