詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

「台湾危機」

2021-04-17 20:57:00 | 自民党憲法改正草案を読む
読売新聞の、この記事。西部版(4版)の見出しは、
日米「台湾の平和」明記 共同声明
となっている。
見出しを読みながら、私は瞬間的に「台湾危機」ということばを思い浮かべた。
「キューバ危機」はケネディ・フルシチョフ時代にあった。
ソ連がキューバにミサイルを持ち込もうとした。もちろんミサイルの照準はアメリカ。
今度はアメリカが台湾(海峡)にミサイルを持ち込む代わりに「日本の自衛隊」を派遣しようとしている。
中国と台湾の間に、どんな緊張があるか。
それは香港、新疆ウイグル問題のような深刻なものか。
さらには、いま、東南アジアでいちばん緊張が高まっているのはミャンマー問題だろう。
そうした問題を押し退けて「台湾海峡」を取り上げ、共同声明に明記するのは、どういう目的だろうか。
私には「台湾危機」をつくりだすことで、日本にアメリカの兵器を買わせようとしているとしか思えない。
もし台湾海峡に入り込んだ米艦隊が攻撃されるようなことが起きたら、「集団的自衛権」が発動され、自衛隊の艦隊が台湾海峡へ出動することになる。
アメリカから米軍を派兵するよりも、自衛隊派兵の方が経済的だし、アメリカ人の被害も少ない。
日本の福祉は、自衛隊のためにどんどん削除され、しかも戦争の危機も高まる。
菅は、安倍と同様、国民のことは何も考えていない。
自分の「地位」だけを考えている。
首相でいるために、アメリカの言うことなら何でも聞く。
拉致問題解決に協力する、五輪開催支持という「ことばだけの約束」と引き換えに、日本はアメリカの戦略のために破滅への道をたどりつづける。
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嵯峨信之『詩集未収録詩篇』を読む(110)

2021-04-17 09:50:34 | 『嵯峨信之全詩集』を読む

* (そして非在は湖を閉ざした)
<blockquote>
ぼくの歩く音のみがきこえてきた
</blockquote>
 「湖を閉ざした」の「閉ざす」はどういう意味だろうか。湖への入り口がなくなった、ということか。そこにあるけれど、そこに入ることはできない。
 あるいは「非在」と「閉ざす」は同じ意味かもしれない。
 湖が消える。消えたけれど、湖の記憶がある。ここに湖があったはず、と思いながら「ぼく」は歩く。歩きながら、非在の湖を思う。あるいは、いま、ここに非在だからこそ、湖を思うことができる。
 非在は、そのとき比喩になる。
 しかも「非在の湖」という超越的な比喩に。比喩でしか(ことばの運動でしか)存在し得ないものになる。
 そのとき、「ぼく」も消える。非在になる。しかし、「歩く音」は存在する。「ぼく」が存在した証として。
 「聞こえてきた」は、すこしむずかしい。この「きた」は過去形ではなく、現在形である。電車がホームにはいってくる。そういうとき「あ、電車がきた」という「きた」に似ている。「到来」である。「ぼく」が消えたことを認識する、その認識が「音」として到来するのである。

 

 


*

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工藤正廣「出会いと別れのあかるさ」

2021-04-17 08:45:53 | 詩(雑誌・同人誌)

工藤正廣「出会いと別れのあかるさ」(「午前」19、2021年04月15日発行)

 工藤正廣「出会いと別れのあかるさ」は大学の恩師のことを書いている。とても美しい連がある。

あなたはその日その日の手書きの詩をぼくに渡してくれた
これまでみたこともないような美しい筆記体のキリル文字だった
それを受け取って授業の前にプリントするのが
ぼくの役目だった
あれは何という名だったろう
乾湿プリンターだった?空色の液体のなかに用紙をくぐらせ
そして出てきたプリント用紙はうっすらと湿ったライラック色
アレクサンドル・ブロークの詩のテクストは
あなたの手蹟で まるでネヴァ河の波から現れたとでもいうようだ
乾くまでのあいだ しばしぼくは湿った用紙から生まれる詩句を見つめる

 工藤が書いているプリンター(?)を私は知らないが、次世代のコピー機も似たようなものだった。湿って、濡れている。ライラック色ではなく、灰色だったような気がする。文字が浮き出てくるのはいいが、時間がたつと消えてしまう。
 工藤のことばが美しいのは、コピー(プリント)の過程のなかに時間があるからだ。「くぐらせる」「出てきた」という動詞をつきやぶって、「現れた」という動詞がライラックの花が咲くように動いてくる。
 ネヴァ河(の波)を、そのとき工藤が知っていたかどうか、わからない。たぶん学生だから、実際には、まだ見ていないだろう。しかし、写真や雑誌などで見たことがあるかもしれない。あるいは地図を見ながら何度も想像したかもしれない。そして、その想像は、単なる想像ではなく、工藤の「肉体」にしみついた「思想」になっていただろう。それを突き破って、知らなかったもの、しかも「ほんもの」が、まるで花が開くように、自らの力で生まれてくる。
 それは「美しい筆記体のキリル文字=手蹟」をさらに突き破り、「アレクサンドル・ブロークの詩句」になる。詩句になりながら、また、「美しい手蹟」であることをやめない。ふたつは「ひとつ」になって、そこにある。
 ここに書かれているは「記憶」である。しかし、その「記憶」は「いま」生きて動いている。「ぼくは湿った用紙から生まれる詩句を見つめる」と現在形で書かれるのは、そのためである。
 詩は、つまり充実した時間は、いつでも「現在」である。

 

 


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なぜ台湾問題?

2021-04-17 07:51:23 | 自民党憲法改正草案を読む
日米共同文書、「台湾の安定」と「中国の人権懸念」一致へ
読売新聞の見出し。
「台湾の安定」とは、何を意味するのだろう。
私には安定しているとしか見えない。
私の友人のひとりは台湾と中国(上海)を行き来している。
安定しているからこそ、こういうことができる。
記事中に、こう書いてある。
↓↓↓↓
 日米首脳間の共同文書に台湾問題が書き込まれるのは、1969年の佐藤栄作首相とニクソン大統領との会談以来となる。バイデン政権は中国が台湾への軍事的圧力を強めていることを警戒しており、台湾海峡の平和と安定に向け、日米両国で結束する考えを国内外に示す狙いがある。
↑↑↑↑
1969年といえば、国連に台湾が「中国」として加盟していたとき。
71年に台湾にかわり、中国が「中国」として加盟した。
代表権が交代した。
その後、日本もアメリカも台湾とは断交し、中国と国交を結んだ。
その後、「台湾」は中国の一地域である。日本にとって「国」ではない。
なぜ、ここで台湾が問題になるのか。あるいは台湾を問題にするのか。
アメリカは、いわゆる「冷戦時代」に方向転換している。
「台湾」を「キューバ」のように位置づけようとしている。
ケネディ時代のキューバである。
ソ連(ロシアではない)は、アメリカの「庭」にあるキューバにミサイルを配備しようとした。キューバからなら、アメリカをすぐ攻撃できる。
いま、アメリカは、日本と台湾を、そのときのキューバのように利用しようとしている。
問題は、アメリカが台湾と協力して「台湾海峡」の安全を守る(台湾を守る)という関係を、アメリカと台湾との間で確認しているのではなく、台湾を抜きにして、アメリカと日本で確認していることである。
これは、簡単に言い直せば、アメリカの戦略に日本が片棒を担がされているということである。
「インド洋、東シナ海の安全を守る」という名目で、アメリカの軍備費の負担が増えるだけである。「台湾防衛」の分担も日本がになわされる。
日本と中国の関係が、いま以上にややこしくなる。
アメリカは、中国と日本に、不必要な緊張関係をもたらし、軍事費を投入させ、結果的に経済力を低下させる。中国、日本の経済力(日本の経済力は低下する一方だが)を抑圧しておいて、アメリカは自国の経済を活性化するために金をつぎ込むということだろう。
アメリカの「一石二鳥作戦」に菅は利用されているだけである。
「1969年の佐藤栄作首相とニクソン大統領との会談以来」などと、まるで「大手柄」であるかのような書き方は、現実を無視している。
国連での中国の代表権の交代、中国との国交樹立、台湾との国交断絶という歴史を踏まえて、バイデン-菅の会談を見ないととんでもないことが起きる。
だいたい、いま取り上げるべきは台湾問題というよりも、ミャンマー問題だろう。ミャンマー問題に、どう日米が協力するか。それが共同宣言にもりこまれないとしたら、それはあまりにも「現実離れ」しているとしか言いようがない。
このことだけからも、台湾問題を共同声明にもりこむ、それが「目玉」というとらえ方がおかしいことがわかるだろう。
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