和辻哲郎全集第五巻。545ページ。
法華経は文学と哲学との合い子であって、純粋の文芸作品でもなければ、また純粋の哲学書でもないのである。同じようなことはプラトーンの対話篇についても言える
読みながら、これは和辻の文章についても言えるのではないか、と思う。和辻の文章には、文学的魅力と哲学的魅力がある。逆に言った方がいいかもしれない。哲学的魅力と文意学的魅力がある。別な言い方をすると、哲学(論理)を追究して言って、ある瞬間に、論理を打ち破って感覚が世界を広げる瞬間がある、と私は感じる。そして、その感覚が押し広げた世界は、いままで存在しなかった論理を待っている感じがする。論理の予感がある。
いま引用した文章にプラトン(対話篇)が登場するが、これも私が和辻に惹かれる理由である。私はいつでもプラトンを読み返したい。ここ何年か、毎年正月一日にはプラトンを読む。プラトンのことばを追いかけるのは、とても楽しい。
方便はあくまでも実践上の必要として出てくるのであって、理論上の必然としてではない。
551ページの、このことばにも私は傍線を引いた。それは、こんなふうにつづいている。
諸説が一つの統一に達するとすれば、それは説かれた法における内容的な統一ではなくして 、むしろ法を説くブッダにおける主体的な統一だといわざるを得ない。
「実践」は「主体的統一」と言いなおされている。「主体的統一」をもって行動(実践)するとき、そこには論理(法)ではなく「方便」が動く。「方便」とは「個別の事情」と言いなおされるかもしれない。
「個別の事情」をそれぞれの個人の「肉体」と言いなおし、「法(論理)」を「こころ」と言いなおせば、そこからやはり「こころは存在しない(存在するのは肉体だけ)」というところへ、私のことばは動いていこうとするのだが、これは私が私自身で納得していることであって、他人を納得させる形では書き直すことはできない。
このことと直接的な関係(論理的脈絡)を追うことは難しいのだが……。557ページ。
主題が動因であって、それが事件を産んで行く
というのも、印象に残る。「動因」は「主体的統一」であろう。それが「肉体」だからこそ、そこには「事件」が起きる(生まれる)。和辻は、「生まれる」ではなく「産んで行く」と書いている。たしかにそれは「肉体」が「産んで行く」ものである。
それは、どういうことかというと。560ページ。
思想の叙述を目ざしているプラトンの対話篇に対話者として現われてくる諸人物は、いずれも実に躍如として生きているように思われる。
「主体的統一」は「生きる」ということなのである。
きょう最初に引用した文章、文学(文芸)と哲学との融合は、558ページ以降の部分に結晶のように輝いている。
その展開は、いわば内へ渦を巻いて行くような展開であった。(略)それは思想の論理的展開ではないが、しかしそれによって思想的主題は著しく力を高めてくるのである。
「思想」が人間の形をして動く。これは和辻の文章から私が受け取る印象そのものである。
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