熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

C&Cユーザーフォーラム:CEO達の講演

2008年11月16日 | 経営・ビジネス
   NEC主催のC&Cユーザーフォーラムについては、ニコル氏と安藤忠雄氏の講演について書いたが、他に聞いた講演で多少興味を持ったのは、三井住友銀行の奥正之頭取と伊藤忠商事の丹羽宇一郎会長の話であった。
   他のCEOたちの話は、企業の社会的責任等を強調した非常に高邁な経営理論や明るい未来像を展開していて、耳には優しいが、果たしてそんな奇麗事の経営でよいのかと思うようなもので、ミルトン・フリードマンが聞いていたら噛み付くであろうと思って聞いていた。

   奥頭取は、世界経済危機が深刻になる前に、ITシステム全般をお世話になっているNECの依頼があったので引き受けたが、非常に時期が悪かったと言いながら、今回の金融危機の顛末や状況について、実に丁寧に解説したので、本題のSMBCの不確実時代への取り組みについて、駆け足であった。
   私の記憶に残っているのは、本題とは離れるが、
   LTCMの破綻に対しては、当時アメリカに居て関わっていたが、儲かっていた時点で、キャッシュ化したので、損得トントンになり、幸い被害がゼロだったので、今日ここに立っておられるのであると言う話と、
   リーマンブラザーズのディック・ファルドCEOは以前から知っていたが、最近会った時には、びっくりするほどワンマンになっていたと言うコメントである。

   LTCMなど氷山の一角で、今回のサブプライムについては関わりが軽微だとしても、全く見通しの不確定な、ファイナンシャル・エンジニアリングを駆使した高いレバリッジを利かせた危険でリスクの高いファンドやデリバティブなどに巨額の資金を振り向けたことが問題なのである。
   最近では、傷ついた巨額の不良資産の処理が、あたかも企業経営の健全化に資するように考えられていて、時には、株価が上がるのなどは、正に、深刻な経営者のモラルハザード以外の何ものでもないと思っている。

   もう一つのワンマンぶりだが、これも経営者としての深刻なモラルハザードと言うか経営者の使命感とエシックスの欠如で、今回、世界金融危機対策で、システムの法制度など規制を強化しようと言う決定がなされているが、経営者の倫理観が地に堕ちた場合には救いようがない。
   トヨタの奥田碩氏が、「厚生労働行政のあり方の懇談会」で、「TV報道の厚労省叩きは異常な話で、マスコミに報復してやろうかな、スポンサーを降りるとか」と発言したと言って物議を醸しているが、これなど、実に悲しい話である。

   この点、丹羽会長など、清廉潔白で、企業の業績など悪ければ総てCEOの責任であり、野球でも負ければ総て監督の責任だと一刀両断である。
   日本の財政赤字の深刻さは致命的であり、先延ばしにする訳には行かないので、国民がこぞって応分の負担をすべきで、高額所得者が率先して協力せよと言う。

   日本の生きる道は、食料、エネルギー、水、資源等一切を輸入に頼らざるを得ないので、財産は人財と技術しかない。
   企業の発展のためには、この人財を如何にやる気を起こさせて活性化することが出来るかが最も重要だとして、伊藤忠の人材育成システムの一環を説明した。

   入社4年以内に、必ず海外に赴任する。
   新任課長研修には、短期のMBAコースを受講させる。
   国内の組織に、必ず、日本語の出来ない外国人を一人常駐させる。
   と言ったメニューだが、やはり、異文化との遭遇によって、従業員をインスパイアーすることであろうが、全社がこう言った動きをすることは非常に効果的で素晴らしいことだと思う。

   明治時代には、時の世の多くの分野で、例えば、漱石や鴎外は勿論、日本をリードした人物の多くは、海外留学など海外経験者が多かったが、最近では、グローバリゼーションと騒がれている割には、海外経験者が冷遇されており、まともに高度な学問芸術や研究のために留学する若者が極端に減少して来ている。
   嘘のような話だが、普段、欧米での海外生活や経験などを語ると毛嫌いされるので、絶対に話さないように心がけており、時々、経験者だけが集まって密かに語る会を設けて憩っていると言う。これが、日本の現状であり、
   日本人の、国際化、グローバリゼーション志向の精神など、おいそれと育つ筈がない。
   外国文学好きだとか、昔からハイカラ志向で、海外情報や文物だけは溢れているのだが。
コメント
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