乃木坂の新国立美術館で、日展が開かれているので、ミッドタウンでの午後のフォーラムを端折って見に行った。
毎年殆ど変化はないのだが、その時代を反映した新しい作品が出てくるので、それを感じる楽しみもあり、それに、やはり、日本の現在の絵画や彫刻、工芸、書などの集大成でもあるので、ゴーイング・コンサーンと言うかアクティブな芸術作品を鑑賞する楽しみがある。
しかし、実際のところ、絵にしても、彫刻にしても、特別な知識がある訳でもなく、これまで多くの作品を見てきたと言うだけだから、好きか嫌いかと言った自分の直感を頼りに鑑賞する以外にない。
時間の所為もあったが、書だけは、全く鑑賞眼がないので、今回も見なかった。
まず、この口絵写真の彫刻部門だが、何時もながら女性のヌード立像が多く、作品の8割以上だと言うと言い過ぎであろうか。
ところが、特選になっているのは、この写真のように、shortcut(阿部鉄太郎作)と銘打った下着を着けた少女坐像であったり、wish(二塚佳永子作)と題する下着姿の乙女の立像で、ヌードではない。
良く見てみると、この二体の素晴らしい女性像は、実に緻密に丁寧に仕上げられており作者の意図と主張がはっきりしているが、他の女性像は、大方出来が荒く、何を訴えたいのか表題とのチグハグ感と言うか、奇を衒った感じが濃厚で意味不明の作品が多いような気がした。
私など、ギリシャやローマ、ミケランジェロやロダンなどの彫刻のイメージがこびり付いているので、どうしても、彫刻は、まず、シンプルで美しくなければならないと思っているのでなおさらである。
尤も、嶋畑貢作の「風の舞」と言う日展会員賞に輝く黒光りのする美しいブロンズ像は、伏目がちに瞑目する乙女の一瞬を描写した素晴らしいヌード像である。
ボーイッシュ・スタイルのスマートな女性像で、とにかく、実に美しいのである。
もう一つ印象深かったヌード像は、入選作品ではなかったが、田丸稔作の「部屋」と言う濃茶色の、上品なエロチシズムを感じさせる作品である。
低い台に左肘を預けてたたずみ、自分の美しさを謳歌するように、右腰を前方斜めに突き出して身をくねらせた女性像で、涼しい表情で前方を見据える姿の美しさは格別である。
興味深かった作品は、口絵写真の左端の「写してみたら・・・?」(正しくは、映してみたら、であろう)と言う田中厚好作の作品で、犬がじゃれて鏡に飛びついたら自分の顔が人間だったと言うストーリーだが、講評では、現代社会の側面をシニカルかつコミカルに描写した社会性に富んだ彫刻の斬新さが評価されている。
鏡に映った顔の表情だけがリアルで、他は荒削りの描写だが、頭で考え抜いたと言った作品で、物語性があるのが面白い。
隣の工芸美術の部だが、陶磁器様の置物から染色や織物、漆塗り等のスクリーンなど色々なジャンルの作品が並んでいて興味深い。
衝立や壁飾りと言ったスクリーン風の作品は、抽象的な造形美や色彩の美しさを意図した作品が多いような気がして、分からない所為もあって、どうしても絵画的な作品が趣味の私にはあまり食指が動かなかった。
旅をしながら、色々な置物や人形などを見て歩いた思い出が重なっていて、やはり、置物のデコレーション作品に目が行ってしまう。
夫々の作品に、物語性があって面白いのである。
今回、印象的だったのは、栗本雅子作の「白い渚」と、久保雅裕子作の「風のみち」である。
白い渚は、白い優雅なイブニングドレス風の白衣を風になびかせながら渚で戯れる3人の乙女たちを造形した群像で、非常に繊細で不安定な乙女たちのムーブメントの一瞬をフリーズした作品だが、モーツアルトの喜遊曲が、どこかから聞こえてくるような爽やかさが実に良い。
風のみちは、円筒形の磁器を逆さにして、表面を滑らかに磨き上げた艶消しシルキータッチの表面に、実に繊細でシンプルだが優雅な絵が描かれ、例えば、色彩豊かな一羽の小鳥の絵など正に日本伝統の美意識を凝縮させたような造形美で、これが有線七宝だと言うのだから驚く。講評では、「蓮池に吹く風の気配を自ら焙烙合せで調合した釉薬の淡い色彩でまとめ・・・」とされているが、このような綺麗な七宝作品をはじめて見た。
毎年殆ど変化はないのだが、その時代を反映した新しい作品が出てくるので、それを感じる楽しみもあり、それに、やはり、日本の現在の絵画や彫刻、工芸、書などの集大成でもあるので、ゴーイング・コンサーンと言うかアクティブな芸術作品を鑑賞する楽しみがある。
しかし、実際のところ、絵にしても、彫刻にしても、特別な知識がある訳でもなく、これまで多くの作品を見てきたと言うだけだから、好きか嫌いかと言った自分の直感を頼りに鑑賞する以外にない。
時間の所為もあったが、書だけは、全く鑑賞眼がないので、今回も見なかった。
まず、この口絵写真の彫刻部門だが、何時もながら女性のヌード立像が多く、作品の8割以上だと言うと言い過ぎであろうか。
ところが、特選になっているのは、この写真のように、shortcut(阿部鉄太郎作)と銘打った下着を着けた少女坐像であったり、wish(二塚佳永子作)と題する下着姿の乙女の立像で、ヌードではない。
良く見てみると、この二体の素晴らしい女性像は、実に緻密に丁寧に仕上げられており作者の意図と主張がはっきりしているが、他の女性像は、大方出来が荒く、何を訴えたいのか表題とのチグハグ感と言うか、奇を衒った感じが濃厚で意味不明の作品が多いような気がした。
私など、ギリシャやローマ、ミケランジェロやロダンなどの彫刻のイメージがこびり付いているので、どうしても、彫刻は、まず、シンプルで美しくなければならないと思っているのでなおさらである。
尤も、嶋畑貢作の「風の舞」と言う日展会員賞に輝く黒光りのする美しいブロンズ像は、伏目がちに瞑目する乙女の一瞬を描写した素晴らしいヌード像である。
ボーイッシュ・スタイルのスマートな女性像で、とにかく、実に美しいのである。
もう一つ印象深かったヌード像は、入選作品ではなかったが、田丸稔作の「部屋」と言う濃茶色の、上品なエロチシズムを感じさせる作品である。
低い台に左肘を預けてたたずみ、自分の美しさを謳歌するように、右腰を前方斜めに突き出して身をくねらせた女性像で、涼しい表情で前方を見据える姿の美しさは格別である。
興味深かった作品は、口絵写真の左端の「写してみたら・・・?」(正しくは、映してみたら、であろう)と言う田中厚好作の作品で、犬がじゃれて鏡に飛びついたら自分の顔が人間だったと言うストーリーだが、講評では、現代社会の側面をシニカルかつコミカルに描写した社会性に富んだ彫刻の斬新さが評価されている。
鏡に映った顔の表情だけがリアルで、他は荒削りの描写だが、頭で考え抜いたと言った作品で、物語性があるのが面白い。
隣の工芸美術の部だが、陶磁器様の置物から染色や織物、漆塗り等のスクリーンなど色々なジャンルの作品が並んでいて興味深い。
衝立や壁飾りと言ったスクリーン風の作品は、抽象的な造形美や色彩の美しさを意図した作品が多いような気がして、分からない所為もあって、どうしても絵画的な作品が趣味の私にはあまり食指が動かなかった。
旅をしながら、色々な置物や人形などを見て歩いた思い出が重なっていて、やはり、置物のデコレーション作品に目が行ってしまう。
夫々の作品に、物語性があって面白いのである。
今回、印象的だったのは、栗本雅子作の「白い渚」と、久保雅裕子作の「風のみち」である。
白い渚は、白い優雅なイブニングドレス風の白衣を風になびかせながら渚で戯れる3人の乙女たちを造形した群像で、非常に繊細で不安定な乙女たちのムーブメントの一瞬をフリーズした作品だが、モーツアルトの喜遊曲が、どこかから聞こえてくるような爽やかさが実に良い。
風のみちは、円筒形の磁器を逆さにして、表面を滑らかに磨き上げた艶消しシルキータッチの表面に、実に繊細でシンプルだが優雅な絵が描かれ、例えば、色彩豊かな一羽の小鳥の絵など正に日本伝統の美意識を凝縮させたような造形美で、これが有線七宝だと言うのだから驚く。講評では、「蓮池に吹く風の気配を自ら焙烙合せで調合した釉薬の淡い色彩でまとめ・・・」とされているが、このような綺麗な七宝作品をはじめて見た。