熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

日本製造業の危機と言うが

2013年02月02日 | 政治・経済・社会
   gooニュース産経の「製造業の就業者、半世紀ぶり1千万人割る 12月労働力調査」「日本のものづくり危機 人材流出、競争力低下…失われる雇用」記事で、日本の製造業の急速な凋落模様が報じられている。
    産業別就業者数で「製造業」が前年同月より35万人減って998万人となり、1千万人を割り込み、ピークの1992年10月の1603万人より、4割も減少している。と言うのである。

   製造業は半導体をはじめとする電子部品やテレビなどの電機製品、鉄鋼や非鉄金属などの素材産業、化学製品などで業績悪化を受けてリストラが進んでいるうえ、自動車などの比較的好調な分野でも円高の打撃を緩和するため、生産拠点を海外にシフトする動きも加速する一方となっている。
   さらに中堅、中小企業では取引先大手のこうした動きが強く影響されるため、日本国内での製造業全体の雇用は減少の一途をたどっている。
   人口減に伴う内需の縮小に加え、電力不足や高い法人税率など「六重苦」を背景に、海外への生産移転は加速するばかり、だと言うのである。

   さて、その6重苦だが、朝日新聞「キーワード」の解説によると、6重苦とは、
   企業経営者らが諸外国と比べて日本の事業環境が不利な要素としてあげる6項目。一般的には、円高▽高い法人税率▽自由貿易協定への対応の遅れ▽製造業の派遣禁止などの労働規制▽環境規制の強化▽電力不足――。経済産業省によると、2011年時点の法人実効税率は日本(東京都)の40.69%に対して、米国(カリフォルニア州)が40.75%、ドイツが29.41%、韓国が24.2%など。日本は法人減税と復興増税があり、12年度は38.01%。と言うことである。

   国内製造業は、国際競争の激化で厳しさを増しているのだが、国内の空洞化を食い止められなければ、人材流出を招き、世界で戦う日本の競争力がなくなり、工業立国の屋台骨を根底から揺るがせかねない。
   その為に、政府は、円高是正や成長戦略の着実な実行を通じて、空洞化を食い止めたい考えで、健康や環境・エネルギー、次世代インフラなど重点4分野を成長領域と位置付けて規制緩和や税制支援策を集中的に講じる方針を示しているのだが、早期に有効な処方箋を打ち出せなければ、産業空洞化は加速度的に進むことが避けられない。
   いずれにしろ、政府は六重苦の解消に向けた努力と同時に、新規産業の育成と同時に、規制緩和で新しい内需型産業を育成し、雇用を生み出す必要がある。と言うことは分かっているのだが、制度疲労を起こして二進も三進も動かなくなってしまった硬直化した日本の経済社会構造を、どうして動かすのか。

   先の政府の方針では、既に、日本経済を牽引してきた既存の製造業には見切りをつけたと言わんばかりに、新規の健康・環境・エネルギー・次世代インフラなどの重点4部門を推進して、産業構造を大きく転換しようとしており、確かに、課題先進国の日本としては、極めて有望な分野への転換であり、希望が持てるかも知れない。
   しかし、短期的には、即刻6重苦の解消と規制緩和によって、日本の製造業の要である既存産業が、世界に誇る高度な科学技術水準を死守し発展させる方が、はるかに、有効かつ適切な手段ではないかと思っている。
   歴史と伝統に培われてきた日本の製造業の根幹は、世界に誇るべき宝であることは間違いなく、最近のIT・デジタル革命とグローバル化によって、どちらかと言えば、価格競争に比重が移り過ぎて、この価格競争で負けているために日本企業が苦戦しているのであって、国際競争力を強化するためには、日本政府にやれることは、その足かせとなっている6重苦の解消と雁字搦めの規制緩和を早急に推進することであろう。
   尤も、日本には、多くの既得利権団体が存在していて、強力な抵抗勢力となって進行を阻止するであろうが、そうなれば、外国に漁夫の利を占められ、諦めるしか仕方がなかろう。

   もう一つ気になるのは、日本の経済規模が大きくならなければ、必然的に、雇用が増えないと言うことである。
   GDPをアップするためには、一般に企業などが生産に使う労働力、生産設備などの資本、技術など知識の量を増やすことだと言われているのだが、この中では、当然、時系列的には企業努力によって、生産設備の改善や技術や知識の向上が図られ、更に、生産性がアップするので、GDPが伸びなければ、労働力に皺寄せが行って、必然的に、雇用が減退し、所得賃金が下がらざるを得なくなる。
   実際に、失われた20年間で、起こっている雇用の減少と所得賃金の低下は、このことの査証である。

   それに、グローバル経済が進展すればするほど、俗に言う、地産地消現象、すなわち、市場のあるところで現地生産すると言う傾向が強まり、国内で製造して、グローバルベースの貿易で稼げばよいと言った傾向がどんどん縮小してくる。
   そうなれば、結局、国内の産業なり雇用の規模は、国内経済の大きさに限定されることになる。
   今、日本のGDPは、世界の6~7%くらいだと思うのだが、要するに、経済成長を実現できなければ、国内市場は縮小し、雇用が減少することにならざるを得ないと言うことである。

   安倍内閣が、経済政策の「三本の矢」、すなわち、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略 を打ち出して動き始めた。
   経済成長ありきの経済政策であるべきだと思っているので、民主党のように分配を重視した政策より好ましいと思っているが、デフレ脱却を緊急課題として、日銀に圧力をかけてインフレターゲットに踏み込んだり、国土強靱化と日本列島改造を旗印にした実質的公共投資拡大などを推進しようとしているが、私自身は、成長期の旺盛な経済活力を失った成熟経済では、いくら大胆な手を打っても、金融や財政政策には限界があると思っている。
   したがって、三本の矢の金融財政政策には、長期的には期待できないと思っているので、希望は、成長戦略である。
   イノベーションと規制緩和だと言うことだが、良否はともかく、ホリエモンや村上ファンド級の狂想曲的なムードを醸し出さない限り、民活と言っても、アンテルプルナーやイノベーターは生まれないだろうと思う。
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