日経ビジネス最新号で「景気対策、日本は対応を誤るな」と言う記事で紹介されているが、Project Syndicateの論文「Why Stimulus Has Failed」で、ラグラム・ラジャン教授は、景気対策のために、新ケインジアンは、需要全般を喚起しようとしているが、これでは一時しのぎの効果しかなく、持続的な解決策は、供給側を、もっと普通で持続可能な需要源を生み出せるように調整することだと提言している。
建設業や自動車産業の労働者を成長産業でも働けるように再訓練することで、政府が最もやってはならないことは、最早発展できない企業を無理に支えたり、成長しない産業の需要を低利の融資で支えたりすることだと言う。
乗数効果も加速度原理の効果も減殺してしまった時代遅れの需要をいくら増幅して刺激しても無駄で、産業構造を時代の潮流に合わせて大きく変換して、新しい需要を創造し得る体制を整えない限り、経済の再生はあり得ないと言うことである。
日経ビジネスの要約を補足すると、
危機後の経済の根本問題が、需要の不足にあると言う認識は正しいが、金融危機後の需要不足は、一様ではないので、全般的な需要刺激策では効果がない。政府は、成長から見放された既存産業を支援するのではなくて、成長分野への雇用訓練を行うなど資源を振り向けて、産業構造を将来性と発展性の高い分野にシフトすることによって、新しい需要を創出して、経済を浮揚させるべきである。
と言うことであろう。
この論文は、必ずしも日本のことだけを言っているんではなく、金融危機後の欧米日の経済の景気刺激策の誤りを論じているのだが、最後に、日本経済について、非常に貴重なコメントを述べていて、注目に値する。
Frighteningly, the new Japanese government is still trying to deal with the aftermath of the country’s two-decade-old property bust. One can only hope that it will not indulge in more of the kind of spending that already has proven so ineffective – and that has left Japan with the highest debt burden (around 230% of GDP) in the OECD. Unfortunately, history provides little cause for optimism.
恐ろしいのは、新しい日本政府が、20年前の不動産バブルの処理をいまだに行っていること。日本政府が、全く効果がないことがすでにはっきりしているタイプの、そして、そのために、GDP比230%と言うOECDでも最悪の負債を背負い込むようになった支出にこれ以上執着しないことを祈るのみである。
不幸なことに、歴史は、楽観論的な根拠など殆ど示し得ていないのである。
安倍政府は、デフレ脱却、日本経済再生のために、三本の矢政策で、機動的な財政政策をうたって、国土強靱化と日本列島改造を旗印にした実質的公共投資拡大などを推進しようとしているが、ラジャンは、このことを言っているのであろう。
「巨大地震など自然災害に対して脆弱」な日本にとっては、欧米とは違って、公共投資の持つ意味は大きく違うであろうが、私自身は、成長活力を失った成熟経済では、ラジャン教授が説くように、最早、長期的かつ持続的な経済浮揚効果は期待できず、国家債務を増大させるだけであると思っている。
ラジャン教授が言うように、歴史には、楽観論が持続するなどあり得なかった筈なのである。
さて、話が飛ぶが、ラジャン教授の言うように、良かれと意図したセイフティネットや弱者救済政策が、既に退場すべきゾンビ企業や泡沫産業を温存するだけで、日本経済の再生に役に立たなかったケースが結構あるように、失われた20年の間に、日本経済が、最も疎かにしてきたのは、激烈なグローバル競争に打ち勝つことのできる強靭な産業構造の構築ではなかったかと思っている。
NHKが、クローズアップ現代の、“返済猶予”は何をもたらしたのか ~検証・金融円滑化法~と言う番組で、
資金繰りに苦しむ中小企業のための緊急の救済措置として2009年12月に施行された「金融円滑化法」が、返済を猶予してもらった中小企業の多くで業績が改善せず、結局倒産してしまうケースが増えている。本来、返済猶予は経営改善のために行われるはずだったが、経営を抜本的に見直すことなく傷を悪化させてしまった中小企業が少なくない。と報道していた。
小泉竹中時代に、これまで日本の歴史にはなかったような、弱肉強食の市場原理主義的な経済政策が実施されて、政治経済社会に、かなり、摩擦や動揺を起こしたが、しかし、日本を取り巻くグローバル経済環境は、もっと激しく熾烈であり、生き馬の目を抜く程度の生易しさではない。
アベノミクスで、やっと、動き出した日本経済だが、いつか来た道ではなく、日本中全体が、本当に劇薬を煽ってでも、発奮すべきであろうと思っている。
建設業や自動車産業の労働者を成長産業でも働けるように再訓練することで、政府が最もやってはならないことは、最早発展できない企業を無理に支えたり、成長しない産業の需要を低利の融資で支えたりすることだと言う。
乗数効果も加速度原理の効果も減殺してしまった時代遅れの需要をいくら増幅して刺激しても無駄で、産業構造を時代の潮流に合わせて大きく変換して、新しい需要を創造し得る体制を整えない限り、経済の再生はあり得ないと言うことである。
日経ビジネスの要約を補足すると、
危機後の経済の根本問題が、需要の不足にあると言う認識は正しいが、金融危機後の需要不足は、一様ではないので、全般的な需要刺激策では効果がない。政府は、成長から見放された既存産業を支援するのではなくて、成長分野への雇用訓練を行うなど資源を振り向けて、産業構造を将来性と発展性の高い分野にシフトすることによって、新しい需要を創出して、経済を浮揚させるべきである。
と言うことであろう。
この論文は、必ずしも日本のことだけを言っているんではなく、金融危機後の欧米日の経済の景気刺激策の誤りを論じているのだが、最後に、日本経済について、非常に貴重なコメントを述べていて、注目に値する。
Frighteningly, the new Japanese government is still trying to deal with the aftermath of the country’s two-decade-old property bust. One can only hope that it will not indulge in more of the kind of spending that already has proven so ineffective – and that has left Japan with the highest debt burden (around 230% of GDP) in the OECD. Unfortunately, history provides little cause for optimism.
恐ろしいのは、新しい日本政府が、20年前の不動産バブルの処理をいまだに行っていること。日本政府が、全く効果がないことがすでにはっきりしているタイプの、そして、そのために、GDP比230%と言うOECDでも最悪の負債を背負い込むようになった支出にこれ以上執着しないことを祈るのみである。
不幸なことに、歴史は、楽観論的な根拠など殆ど示し得ていないのである。
安倍政府は、デフレ脱却、日本経済再生のために、三本の矢政策で、機動的な財政政策をうたって、国土強靱化と日本列島改造を旗印にした実質的公共投資拡大などを推進しようとしているが、ラジャンは、このことを言っているのであろう。
「巨大地震など自然災害に対して脆弱」な日本にとっては、欧米とは違って、公共投資の持つ意味は大きく違うであろうが、私自身は、成長活力を失った成熟経済では、ラジャン教授が説くように、最早、長期的かつ持続的な経済浮揚効果は期待できず、国家債務を増大させるだけであると思っている。
ラジャン教授が言うように、歴史には、楽観論が持続するなどあり得なかった筈なのである。
さて、話が飛ぶが、ラジャン教授の言うように、良かれと意図したセイフティネットや弱者救済政策が、既に退場すべきゾンビ企業や泡沫産業を温存するだけで、日本経済の再生に役に立たなかったケースが結構あるように、失われた20年の間に、日本経済が、最も疎かにしてきたのは、激烈なグローバル競争に打ち勝つことのできる強靭な産業構造の構築ではなかったかと思っている。
NHKが、クローズアップ現代の、“返済猶予”は何をもたらしたのか ~検証・金融円滑化法~と言う番組で、
資金繰りに苦しむ中小企業のための緊急の救済措置として2009年12月に施行された「金融円滑化法」が、返済を猶予してもらった中小企業の多くで業績が改善せず、結局倒産してしまうケースが増えている。本来、返済猶予は経営改善のために行われるはずだったが、経営を抜本的に見直すことなく傷を悪化させてしまった中小企業が少なくない。と報道していた。
小泉竹中時代に、これまで日本の歴史にはなかったような、弱肉強食の市場原理主義的な経済政策が実施されて、政治経済社会に、かなり、摩擦や動揺を起こしたが、しかし、日本を取り巻くグローバル経済環境は、もっと激しく熾烈であり、生き馬の目を抜く程度の生易しさではない。
アベノミクスで、やっと、動き出した日本経済だが、いつか来た道ではなく、日本中全体が、本当に劇薬を煽ってでも、発奮すべきであろうと思っている。