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ミステリ感想-『花窗玻璃 シャガールの黙示』深水黎一郎

2009年10月09日 | ミステリ感想
~あらすじ~
仏・ランス大聖堂から男が転落死した。地上81.5mにある塔は、出入りができない密室状態で、警察は自殺と断定。だが半年後、また死者が。二人の共通点は死の直前に、シャガールの花窗玻璃を見ていたこと……。
ランスに遊学していた瞬一郎が、壮麗な建物と歴史に秘められた謎に迫る。


~感想~
抜群の安定感を誇る作者が、丁寧にものした安心の品質。
物理トリックながら非常にわかりやすく、かつここだけでしかできない仕掛けで、舞台をランスに設定した意味もあるのはさすが。
瞬一郎の放浪譚という側面からも楽しめ、おなじみの芸術論もしっかりと脇を固める実に手堅い造り。
こだわり抜いた結果、その反面、小うるさくなってしまった「美しい日本語論」と、一段組とは思えない重厚感あふれるルビの山にはうんざりさせられるが、最近のミステリファンなら無問題だろう。
本格ミステリとして全く隙のない作品。深水ブランドは今回も裏切らない。


~追記~
taipeimonochromeさんの考察がいつもながらすばらしいのでご紹介。
こんな趣向まで隠されていたとは、深水黎一郎、そして見抜いたtaipeiさん恐るべし。
こういった感想を読むと、僕みたいな三文感想なぞに存在意義はあるのだろうかと思ってしまうなあ。
まあ隙間産業みたいなものを目指してやっていきますが。


09.9.24
評価:★★★☆ 7
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