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ミステリ感想-『二つの時計の謎』チャッタワーラック

2009年10月19日 | ミステリ感想
~あらすじ~
モンコン男爵の放蕩息子チャクラが起こした傷害事件を調べるサマイ警部は、同じ夜に発生した二つの事件に突きあたる。輸入品販売店の共同経営者の縊死、運河での娼婦の溺死。
状況からチャクラの関与が疑われたが、現場で発見された二つの時計は、同じ時刻、九時五五分を指して止まっていた。
1932年、立憲革命直後のバンコクを舞台に、サマイ警部と相棒ラオーが事件を追う。


~感想~
島田荘司御大が選んだアジアの本格ミステリシリーズより、タイの本格が登場。
べつに象に乗った名探偵がムエタイ推理でトムヤムクン連続殺人事件の謎を解く! みたいな国辱ものの想像をしていたわけではないが、戦前らしさもタイらしさもきわめて希薄な、『新宿鮫』の新作や『相棒』のノベライズとして出されてもさほど違和感のないようなハードボイルドで、堅実なつくりは認めるものの、「本格」と銘打つほどのトリックやどんでん返しがあるわけでもなく、一言でいえばいたって地味な作品である。
御大に物申すのは恐れ多いが、せっかくのシリーズ刊行で、しかも日本では目新しいタイ作品ならば、もっとタイらしさを全面に押し出した、奇をてらったものを出したほうが良かったのではなかろうか。
というか、わざわざこれを読むなら普通に翻訳ミステリの傑作を読んだほうがいいような……。


09.10.18
評価:★★☆ 5
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