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ミステリ感想-『死体の汁を啜れ』白井智之

2021年09月23日 | ミステリ感想
~あらすじ~
世界屈指の殺人事件発生率を誇る牟黒市。
豚の頭をかぶった死体、頭と両手足を切断された死体、胃袋が破裂した死体。死体の中の死体…。
異常な殺人事件の数々にヤクザや悪徳刑事や悪徳占い師ら、ならず者たちが挑む。


~感想~
異常な死体にこだわった(?)連作短編集。
SF界隈ですら注目される飛び抜けた発想と、それに基づいた緻密なロジックに定評のある作者だが、本作はまず死体が異常なだけで特殊設定は無く、したがって異形の論理も今回は控えめ。
なぜそんな異常な死体が生まれたのかというロジックやさりげなく張られた伏線は相変わらず巧みだし、霞流一ですら長編一作で一件だけ扱った「死体で遊ぼ」が短編とはいえ8編も繰り出されるのは単純にすごいが、質は玉石混交で、絶えず誰も見たことないアイデアを出し続けてきた作者にしては、おとなしめのトリック・ロジックが多いのも確か。
とはいえグロトリックをグロ手掛かりからグロ論理で暴く個性は健在で、ファンなら十分に楽しめるだろう。
個人的には霞流一みたいな死体ゴラスイッチが素晴らしい「何もない死体」と、たった19ページながら、これとこれをこう組み合わせると不可能状況が出来上がる「屋上で溺れた死体」の発想の冴えが好みだった。


21.9.14
評価:★★★☆ 7
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